正捕手1人は時代遅れ? DeNAラミレス監督は「捕手別投手成績」で徹底使い分け

DeNA・伊藤光、戸柱恭孝、嶺井博希【写真:津高良和、荒川祐史】

他球団も捕手併用の流れ 規定打席以上の捕手は阪神・梅野ら3人だけ

巨人に次いでセ・リーグ2位につけているDeNA。投手によって3人の捕手を使い分ける、アレックス・ラミレス監督の采配がユニークだ。11日現在、先発捕手の座を戸柱が24試合、2軍調整中の伊藤光が13試合、高城が6試合、嶺井が3試合と分け合っている。

たとえば、エース今永が先発する試合のスタメン捕手は、最近3試合連続で戸柱。というのも、受ける捕手別の成績を見ると、戸柱の時が3戦全勝、防御率2.41。伊藤光の時が4試合1勝2敗、2.52。嶺井の時は1勝0敗、6.00となっているのだ。

今季成長著しく、セ・リーグトップの防御率1.72をマークしている平良の女房役は8試合すべて戸柱。ちなみに、シーズン5勝6敗、4.11に過ぎなかった昨年の先発14試合は、伊藤光と嶺井が7試合ずつマスクをかぶっていた。

左腕・浜口の場合は、最近3試合連続で高城。高城とバッテリーを組むと3勝0敗、防御率3.00。戸柱とでは0勝1敗、3.38となる。リリーフ陣と相性がいいのも高城で、普段中継ぎの武藤が先発したのをはじめ6投手継投の“ブルペンデー”となった10日の阪神戦では、先発フル出場して勝利に貢献。ラミレス監督を「今後は高城を“リリーフ捕手”として、試合終盤に使うかもしれない」と喜ばせた。

ラミレス監督が捕手を起用する基準は、配球や投手との人間的な相性より、防御率であるらしく、昨季チーム最多の80試合で先発した伊藤光を「マスクをかぶった時の防御率が悪い」との理由で7月19日に2軍へ落としたままだ。

ラミレス監督は高城を“リリーフ捕手”として起用している

しかし、11日の阪神戦では、そんなラミレス監督の起用に2つの誤算が生じた。この日の先発投手は井納で、今季初めてバッテリーを組んだ前回登板の4日の中日戦で7回6安打無失点の快投を引き出したことから、嶺井をスタメンで起用。5回まで1失点に抑えたのは良かったが、同点の6回にサンズ、梅野に適時打を浴び、今季3敗目(3勝)を喫した。

さらに、7回に3番手・エスコバーがマウンドに上がったタイミングで、満を持して高城を“リリーフ捕手”として起用したが、2死三塁でまさかの適時パスボールを犯し、手痛い追加点を献上したのだった。

今後もラミレス監督の起用法の是非が問われることになるが、いずれにせよ、複数の捕手を併用しているのはDeNAだけではない。同日現在、捕手で規定打席に達しているのは両リーグを通じて、阪神・梅野、西武・森、オリックス・若月の3人だけ(昨季トータルでは梅野、広島・會澤、ヤクルト・中村、森、ソフトバンク・甲斐の5人)。広島は強打の22歳・坂倉が成長して、侍ジャパンの主戦捕手である會澤を脅かし、磯村、40歳の石原慶も控えている。

1人の正捕手がシーズンを通してマスクをかぶることをよしとする従来の考え方は、時代遅れになりつつあるのだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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