実は50年前にもあった! タフトの知られざる歴史とは?
かつてダイハツは、1970年代にタフトという車名のオフロード4WDを販売していた。トヨタ版のブリザードというモデルも存在したが、この6月に発売した同名のモデルは軽自動車SUVだ。
ダイハツの軽SUVというと、クロスオーバーテイストに仕立てられていたキャスト・アクティバ(すでに生産終了)の後継モデルと考えてしまうが、そういうワケではないという。
どちらかというと、タフト(タフ・オールマイティ・ファン・ツールの頭文字)という車名が表しているように、「バックパックのようなクルマ」として開発された、アクティブに使い倒せるSUVなのだ。
走りはかなりイイ? 人気のロッキー譲りの本気のデキ
プラットフォームは、普通車SUVのロッキーにも採用されている新開発のDNGA(ダイハツ ニュー グローバル アーキテクチャー)を採用。メカニズム的にはほぼタントと共通だが、プロポーションは独特だ。スクエアなボディは、全高が1630mmと低く抑えられていながら、最低地上高190mmを実現。
さらに165/65R15という外径サイズが軽乗用車で最大となる大径タイヤを装着することで、最大のライバルになるであろうスズキ ハスラーともまた異なる、特異なシルエットとなっている。
キモは前席ファースト! 徹底的にニーズを調査
運転席も一風変わっている。最大の特徴はセンターコンソールがあるコト。
軽自動車は通常、狭さを感じさせないため、また車内で移動しやすいようにセンターコンソールを設けないのだが、タフトではドライバーが主役であるコトを明確にする目的であえて設置している。
シートもサイドサポートがしっかりした形状で、結果、乗り込んだ瞬間から軽らしからぬコクピット感がある空間となっている。
後席スペースもしっかり確保! だが機能はイマイチ
ルーフが低いと室内が窮屈なのでは? と思うかもしれないが、後席も頭上空間は十分確保。その代わりリヤシートはスライド機構やリクライニング機構などが省略されている。
また後席の足もとには、タフトではセンタートンネルが大きく張り出している。つまりタフトはフロアをかさ上げせずに、室内高を確保しているのだ。
リヤシートをシンプルな作りとしているのは、タフトの「バックパックのようなクルマ」というコンセプトが理由だ。シートに多くの機能を持たせるコトより、折り畳んだときのフラットなラゲッジフロアを重視しているのである。
ダイハツ タフトは、使い勝手が抜群のラゲッジに趣味の道具をたくさん積み込んで遊びに行こう! というクルマなのである。
ちなみにダイハツによれば、軽自動車の平均乗車人数は1.5人程度である事を踏まえて、あえてこのような前席を重視した設計としたそうだ。
サンルーフにはキチンと紫外線対策
特筆すべきは全車標準の大型ガラスサンルーフ「スカイフィールトップ」だ。サンバイザーのすぐ後ろからシェードがガバッと開き、空が視界に入ってくるこのサンルーフは、圧倒的な開放感でドライブを楽しくしてくれる。
もちろんスーパーUV&IRカット機能が付いているので、日焼けや暑さを気にする必要はない。
オススメは全部載せのGターボ
さて、今回は限られた時間では合ったが、NA(ノンターボ)の上級グレードであるGと、Gターボに試乗するコトができた。
NAのGは、ポテンシャルの高いDNGAを採用しているだけあり快適性は高いのだが、加速力には若干の物足りなさを感じたのが正直なところ。近所への買い物や最寄り駅への送り迎え程度であれば十分かもしれないが、アクティブに使い倒すとなると、もう少し力強さが欲しいと感じた。
一方Gターボは、エンジンの力強さもさることながら、高速域用のスプリットギアを備えたD-CVTを組み合わせることで、ストレスのない発進加速を実現。
さらにステアリングホイールに備わる「PWR」と書かれたD assist切替ステアリングスイッチを押してパワーモードを選択すれば、エンジンとD-CVTが、よりレスポンスを高める制御となる。乗り心地もフラット感が高く、ダイレクト感のある走りが楽しめる。デイリーユースから趣味の遠出まで、不満を感じずに使いたいなら、Gターボがお勧めである。
テリオスユーザーに朗報! タフトの悪路走破性はかなりガチ
また190mmの最低地上高に加えて、27度のアプローチアングルと58度のデパーチャーアングル、さらにはタイヤが空転した際にブレーキ制御でグリップ状態を維持するグリップサポート制御まで装備するタフトは、悪路走破性も期待出来る。林道や雪道を走る機会が多いユーザーは要注目だろう。
またかつてダイハツの軽には、テリオスキッドという優れた悪路走破性を備えたモデルがあったが、今もその後継モデルを待っているユーザーは、特に降雪地域に多い。そんなユーザーの期待にも応えてくれるはずだ。
売れるのも納得! 先進安全装備&価格面でハスラーを圧倒
バリューフォーマネーの点でもタフトはかなり魅力的だ。
特にGターボは、前述のスカイフィールトップに加えて、軽自動車にはまだ設定が少ない電動パーキングブレーキや、全車速追従機能付きACC、LKC(レーンキープコントロール)、コーナーセンサー(フロント2個、リア2個)、バックカメラなどが標準で備わり、17種類の予防安全機能「スマアシ」ももちろん全て装備する。さらにはオートブレーキホールド機能やグリップサポート制御まで。
これでハスラーのトップグレードであるHYBRID Xターボ(2WD)より6600円安い160万6000円(2WD、消費税込み)というのは、かなり攻めた価格設定と言って良いだろう。
アイデア満載の一風変わったスタイルに、充実した安全装備や運転支援システムを盛り込んだタフトは、楽しいカーライフを想像させてくれる、幅広い世代に受け入れられそうな軽SUVだ。
発売から1カ月で月販目標4000台の4.5倍となる約1万8000台もの受注があったというのも頷ける内容なのだ。
【筆者:竹花 寿実】