息災の願い

 関東がゲリラ豪雨に襲われたおとといの昼間、一部では雷が落ち、停電が起きた。夜になっても自宅の冷房を入れられず、蒸し暑い部屋で何時間も過ごしたという20代の男性がテレビ局の取材に答えていた。帰省をあきらめて“巣ごもり”していたら、こんな目に…と▲コロナ禍で帰省を取りやめたその人にも、天候はまるで容赦がない。感染が広がる折、酷暑が続き、局地的な雷雨もある。こんなにも災いを伴って迎えたお盆はほかに覚えがない▲すでに先週末、帰省の時期は始まったが、県内の駅や港のターミナルは静かで、例年の景色と違っている。県外からの帰省について、中村法道知事は「家族内でよく相談してほしい」と呼び掛けた。この静けさは「相談」の結果なのだろう▲災難を防ぐことを「息災」という。「息」は「止める」の意味らしい。万が一にもウイルスを“同伴”しないようにと、息災のために帰省を控えた人は少なくない▲息災にはもう一つ「無事」の意味もある。もう長いこと古里に帰れず、高齢の家族の身に障りがないか、息災を確かめようと帰省した人、する人も、中にはいるとお察しする▲早く災難が収まるように、家族が無事でありますように。災いの多い盛夏に、息災を祈る声はひときわ大きいことだろう。願いが天に届くことを。(徹)


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