【特集】キッチンカーで『チョウザメ料理』 カレーとベトナム風おかゆ 養殖業者が奮闘 新型コロナで業務用の販売激減

特集は、一風変わった料理を出すキッチンカーです。提供するのは、チョウザメ料理。長野県長和町の養殖業者が新型コロナウイルスの影響による業務用の不振を挽回しようと、キッチンカーによる出張販売に乗り出しました。

キッチンカー「信州ちょうざめ家」

長和町の国道沿いで営業するキッチンカー。

店員:

「お待たせしました」

提供しているのは、魚のフライを乗せたカレーと豚足や青豆が入ったベトナム風のおかゆ「チャオ」の2種類です。

店の名前は「信州ちょうざめ家」。使われている食材は、もちろん…。

チョウザメの養殖を手掛ける『ドリームウィングス』代表・東久保貴之さん:

「チョウザメのガラを使ってスープにしたものをベースに作っている。チョウザメの非常に高い栄養価をそのまま召し上がっていただける」

鎧のように黒光りする体と独特の尖った顔を持つチョウザメ。卵の「キャビア」が有名ですが、実は、身も刺身などにしておいしく食べられます。

トッピングとしてカレーに乗せるフライはチョウザメの身です。

チョウザメの「アラ」を1日かけて煮込んでスープを作り、カレーにも、チャオにも、そのスープをベースとして使っています。

(リポート)

「さわやかなカレーの味の中にチョウザメでしょうか、旨味を感じます。フライの方もジューシーなのでカレーにすごく合います」

キッチンカーでの販売を始めたのは、チョウザメの養殖会社を興した東久保貴之さんです。

東久保貴之さん:

「気軽に『チョウザメはどんなものなの?』『どんな味なの?』ということを知っていただけるいい機会になればと」

東久保さんは、長和町地域おこし協力隊の元隊員。2016年から町内でチョウザメの養殖に取り組んでいます。

ミネラルの少ない湧き水で育てるため臭みがなく、「古代黒耀蝶鮫」というブランドで県内外のホテルや飲食店に出荷しています。

さらなる普及につなげようと今年2月にはキッチンカーを導入。メニューには、フライとの相性が良いカレーとベトナム人の技能実習生を受け入れていることから「チャオ」を取り入れました。

東久保貴之さん:

「一番伝えたいのが、臭みのない魚ということと、栄養価の高い魚ということ。『チョウザメ入っているの?』と聞かれる。それぐらい臭みがない」

料理には自信がありましたが、新型コロナウイルスの影響で出店を予定していたイベントは中止。スタートはうまくいきませんでした。

先月25日、キッチンカーは立科町の道の駅へ。この日が初めてのイベント出店となりました。

食べた人は:

「なかなかチョウザメは食べたことないので、ほんとはここにキャビアでも入っていれば(笑)」

「いいお味ですね。どれがチョウザメの味でしょかね。ちょっとわからない(笑)」

東久保貴之さん:

「広く長野県のチョウザメの味を知っていただくのが目的だったので、(新型コロナで)自分たちでお邪魔しに行きにくい環境になってしまったのがもどかしい」

テイクアウトの客に期待して、普段、キッチンカーは会社の事務所前で営業しています。

新型コロナウイルスの影響で、ホテルや飲食店などの業務用の出荷は去年の1割ほどにとどまっており、少しでも挽回しようとしています。

さらに新メニューの開発にも取り組んでいます。

酢でしめたチョウザメと信州サーモンを薄く切って交互に並べ、酢飯と一緒に押し固めると…。

見た目も華やかな紅白の「押し寿司」が出来上がりました。

東久保貴之さん:

「海なし県の地魚で作ったお寿司は珍しいかと思う。富山のマス寿司に勝ちたいなと思いながら作っている」

同じく出荷が減っている佐久穂町の信州サーモンの養殖業者と連携し、今後、キッチンカーや町内の道の駅などで販売する予定です。

新型コロナウイルスの影響を受ける養殖業者。キッチンカーや新メニューで魅力を発信し、苦境を乗り切ろうとしています。

東久保貴之さん:

「チョウザメが信州の新たな地魚としての普及が第一なので、まずは地元の人に味を知っていただく。そんな機会に私たちのキッチンカーがなればいい」

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