コロナ特需に騙されない!プロが教えるこれから活躍が期待できる銘柄の選び方

コロナ禍で私たちの生活も大きく変わりました。自宅から出かけるときはマスク着用がマナーになり、ソーシャルディスタンスを確保する生活が強いられています。

“ニューノーマル”と言えば聞こえ良いですが、様々な制約を受けた生活で心理面でも後ろ向きになりがちです。人々の消費も落ち込み、景気は厳しい状況になっています。

とはいえ、生活スタイルが変われば新しいニーズが生まれます。そして将来のニーズに対応していく業界が今後の景気回復のけん引役として期待されます。今回はニューノーマルで期待される企業の選び方を紹介します。


ありがちな“注目業界”に注意

既に様々な情報メディアで、ウィズコロナの注目銘柄などが盛んに取り上げられています。そこで、今更感がある将来のシナリオから関連する銘柄を取り上げるというものだけではなく、“読者の皆さんが独自に銘柄を絞り込んでいく方法”を紹介していきます。更に、ありがちな注目業界を見る上で注意すべき点も確認しましょう。

例えば医薬品業界。現在は治療薬やワクチン開発に期待が高まり、世間ではウィズコロナで最も注目される業界にもなっています。しかし医薬品業界全体で見ると足元はむしろ厳しい環境です。

まず、皆さんの外出自粛で受診が減ったため調剤向けの医薬品の売り上げが落ち込んでいます。またマスク効果とも言われていますが、インフルエンザの感染者数が減ったことからインフルエンザ向けの薬が低調となったことも理由です。

このように、イメージと実際の環境が異なるケースがあることは注意すべきでしょう。こうした点は、後ほど紹介する四半期業績面での絞り込みによりチェックが可能になります。

新しい生活様式のルールから考える

さて、ニューノーマルに向かう流れは大きく2つに分類されます。1つ目は(1)コロナ禍に起因して世の中に新たなルールが生まれたことです。“密”を避けることもそのうちの1つです。

身近では、テーマパークでも入場者制限が厳しくなりました。東京ディズニーリゾートは収容人数の数割程度までに制限されているようです。こうした制限が一時的ならば将来、人数制限が解かれていくなかでテーマパーク運営企業の売り上げも元に戻ることが期待できます。しかし“入場料×入場者数”が売り上げのベースです。ソーシャルディスタンスの維持が長期化して、入場者数の低水準が続けば、売り上げは厳しいままです。

5月の緊急事態宣言が明けてテーマパーク再開の報道から株価は上昇しました。しかし業績が本格的に回復するには、企業のイメージを壊さない程度に徐々にでも入場料を高めて売り上げを回復させる必要があるのかもしれません。

ニューノーマルのもう1つの流れが、(2)特にIT化など中心に時代の流れが速まったことです。これまでも遠方との間ではテレビ会議が使われていましたが、コロナ禍で在宅勤務が広まるなかオンライン会議が一般的になりました。また社内決裁についても、押印のための出社を避けるため、電子決裁などの動きも見られます。

こうした流れは、これまでも緩やかに進んできましたがコロナ禍で加速しました。とはいえ、在宅勤務にも懸念される面も少なくありません。例えば情報漏洩リスクの面からは、自宅で仕事のファイルを閲覧できるため会社関係者以外にも情報が触れる可能性もあるでしょう。

コロナ禍で急速に進んだ在宅勤務ですが、ルールやシステム面の整備が追い付かなかった面は否めないでしょう。今後は整備や情報セキュリティなどに関連する企業への需要が期待されます。

さらに一部では在宅勤務が単純な“待機”になるケースへの批判もあるようですが、成果の計測や従業員管理などのシステムが将来は開発されるかもしれません。

そして世の中のIT化全般に関して長期的な観点で見れば、5Gの進展によるバーチャルリアリティの導入からエンターティメントの業界での新たな需要が生まれるでしょう。医療分野でも遠隔診断だけでなく遠隔手術などへの発展もあるかもしれません。

意外性の観点からも考えてみる

ただ、これらの業界に関しては、足元よりもやや遠い将来の“夢”として語られる側面も少なくない点を留意すべきです。こうした将来像をイメージした投資銘柄の選別には、既に市場で注目されているものではなく、意外性の観点を考える方が効果な投資となります。

在宅勤務や会食の自粛などから、自宅で食事する機会が増えた方が多いでしょう。このため郊外にあるスーパーでの買い物客が増えています。不要不急の必需品以外の売り上げ低下から総合スーパー(衣料品など様々な商品も総合的に品揃えている)業界の環境は厳しい状況ですが、食品スーパーは好調です。

しかし、ここで注意すべきは自粛ムードが将来にむけ次第に後退すれば、こうした傾向は変わる可能性があります。

更に在宅勤務に関連した話ですが、都心から離れた家の需要が高まっています。特に、在宅空間を充実させる点からも、地価が高くないところで充分な空間を確保したいという考えもあるでしょう。また従業員の在宅勤務でオフィスのスリム化の流れも見られます。こうしたなか不動産業界の将来は厳しいとの見方もあります。

しかし筆者はそうは考えていません。ソーシャルディスタンス確保の観点から一人当たりの確保すべきスペースが拡大するのであれば、都心においての“場所”の需要が減ることはないと考えます。

下表では、筆者の定性的な観点からニューノーマルのもとでの代表的な注目業界の例をまとめてしてみました。

4~6月期の決算で企業の真価を問う

さて、このように注目業界や銘柄の候補を考えたあとで、次のステップとして読者の皆さんが銘柄を絞り込んでいく方法を紹介します。本当にニューノーマルに向けた環境で、企業の収益が改善しているのかを確認する方法です。

企業は3ヶ月毎にそれまでの3ヶ月間の業績がどうだったのかを公表します。これが四半期決算発表というものです。足元、コロナ禍による世界的な景気後退で経営状況が厳しくなる企業が多いなか企業の4~6月期(2021年度第1四半期)決算発表が相次いで行われています。

緊急事態宣言は4月から、そして皆さんの自粛のスタートは3月のあたりからでした。ですので、足元の4~6月期“好”決算企業はコロナ禍の自粛ムードのなかでも業績が良かった企業になります。こうした企業はどのくらいあるのでしょうか。

東証1部に上場する3月期決算企業のなかで、7月末までの発表分を対象に、4~6月期の営業利益が前年の同じ時期(2019年4~6月期)と比べて増加した企業の割合を見てみました。

集計結果から前年より営業利益が伸びた企業は36%に過ぎませんでした。この数値が50%を割り込んでいると、前年よりも業績が悪い企業の数のほうが多いということですが、基本的には昨年の4月以降は50%を割り込む四半期が多くなり、更に足元はコロナ禍で更に業績が悪化して割合が低下しました。

一方、別の視点で捉えると、この36%の企業に注目すれば前年を上回る利益を計上しており、世の中が変化しているなかで利益が拡大できる銘柄として期待されます。

従って、銘柄選別をするステップとして、先ずは定性的にニューノーマルで活躍が期待される業界や銘柄の候補を選んだ後、その企業が足元の4~6月期決算の営業利益が前年を上回ったか、チェックする方法が良いでしょう。

実際に営業利益のチェックには、東証の東証上場会社情報サービスが便利です。銘柄コード番号を入力すると“適時開示情報”の“決算に関する情報”から決算短信が取得できます。既に決算が発表されていると、直近が「2021年3月期 第1四半期決算短信」となっています。PDFファイルには昨年の第1四半期(4~6月期)の営業利益も載っているので、今年の4~6月期の営業利益がそれを上回ったかを見てみましょう。

決算発表は8月半ばで一旦は終了します。決算発表スケジュールは東証のウェブサイトに掲載されているので参考になります。

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