WECスパ:トヨタ“4輪駆動の優位性”活かし、雨のオープニングラップで首位浮上

 8月15日(土)、ベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットでFIA世界耐久選手権(WEC)第6戦スパ・フランコルシャン6時間の決勝レースが行なわれ、天候に翻弄される展開の中、TOYOTA GAZOO Racingの7号車TS050ハイブリッドが今季3勝目。8号車が2位で続き、チームは今季4度目となるワン・ツー・フィニッシュを達成した。

■決勝

・TS050ハイブリッド7号車(マイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペス)
:1位(143周、ピットストップ6回、グリッド 3番手、最速ラップ:2分02秒239)

・TS050ハイブリッド8号車(セバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、ブレンドン・ハートレー)
:2位(トップと34.170秒差、ピットストップ8回、グリッド 2番手、最速ラップ:2 分02秒310)

 好天に恵まれて暖かかった前日までとは一転、決勝日はスタート数時間前から激しい雨に見舞われるなど、典型的な「スパ・ウェザー」の一日となった。

 決勝レースはセーフティカー(SC)先導で開始され、2番グリッドから8号車ブエミが、3番グリッドからは7号車コンウェイがスタート。5周目にグリーンフラッグが振られると、2台のTS050ハイブリッドは4輪駆動の優位性も活かし、すぐにポールポジションのレベリオン1号車をパス。ブエミの8号車が首位、コンウェイの7号車がこれを追う展開となった。

 天候の回復に伴い、路面コンディションも徐々に良くなっていく中、1時間経過を前にした最初のピットストップでは、先にピットインした8号車はウエットタイヤのまま、そして1周後にピットインした7号車はドライタイヤへ交換と作戦が分かれる。

 しかし、GTクラス車両によるアクシデントで再度SCが導入された時には、ドライタイヤが優位な状況となっていた。

 8号車のブエミは再ピットインしタイヤを交換。これで7号車が首位に浮上してレースが再開されることに。

 その後、再び雨が降りだし、2時間経過を前に2台はピットインし7号車は可夢偉、約1分遅れの8号車はハートレーへとドライバーチェンジ。8号車と約1分差でバイコレスの4号車が3番手に続いた。

 雨脚はさらに強くなり、三度SCが導入。7号車が築いていた後続とのマージンは一旦帳消しとなったが、ピットアウト直後に8号車は些細な問題に見舞われタイムロス。首位7号車と2位8号車は40秒ほどのタイム差で、ほぼレース折り返しのタイミングでの再スタートを切る。

 レースが残り3分の1になると空には太陽も顔を見せ、7号車はロペス、8号車は一貴がドライブするときにはドライタイヤでの走行となった。残り1時間ほどでLMP2クラス車両のアクシデントによりSCが導入されると、8号車の中嶋と7号車のロペスがテール・トゥ・ノーズでのバトルを展開した。

 ロペスは首位の座を守って最後のピットインへと向かい、コンウェイへと交代。8号車もブエミへと交代し、2台のTS050ハイブリッドはその順位のままチェッカーフラッグ。7号車は念願のスパでの初勝利を飾った。

 7号車はドライバーズランキング首位の座を堅守。今季2戦を残した状況で、2位8号車との差を12ポイントにまで拡大した。

「どんなに目を見開いても視界は非常に悪く、大変だった」とハートレー

 村田久武チーム代表は「ワン・ツー勝利は望外の結果で、ドライバー、メカニック、およびエンジニアのたゆまぬ努力に対するプレゼントとなりました」とコメントしている。

「安全を確保した上でレース再開にこぎつけてくれた、FIA/WECの多大な努力に改めて感謝致します。もちろん、ファンの皆様に会場でご覧いただけないのは残念ですが、TV放送を通じて楽しんでいただけたと思いますし、その声援に感謝します」

「次はいよいよル・マンです。TS050ハイブリッド3連覇のかかる特別なレースになりますので、チーム一丸となって万全の準備をして臨みます」

 日本人ふたりを含む、TOYOTA GAZOO Racingの6人のドライバーのコメントは、以下のとおり。

●マイク・コンウェイ(7号車)

「チームに最大の祝福を送りたい。大雨に見舞われその後回復するなど、非常に難しいコンディションのレースだったが、可夢偉とホセが素晴らしい走りをしてくれた」

「本当に大変なレースで、特に8号車は第1セクターと第3セクターで速かったが、なんとか首位を守ることができた」

「サクセス・ハンディキャップがあったので3位か、うまくいって2位くらいの結果を予想していたが、最高の結果で、素晴らしい一日となった」

●小林可夢偉(7号車)

「この結果にはとても満足しています」

「このレースウイーク、チーム全員がミス無く素晴らしい仕事をしてくれました。私自身のスティントは、降雨のために視界が悪く、コース上に留まっているのが大変なほどの非常に難しいコンディションでしたが、8号車との争いで、プッシュを続けなくてはなりませんでした」

「我々7号車にとっては、ル・マンの直前という絶好のタイミングで、完璧な週末となりました。この勢いのままル・マンへと臨みます」

●ホセ・マリア・ロペス(7号車)

「今日はすべてが我々に味方してくれた。雨が降らなかったら、ドライコンディションで非常に速かったレベリオンとの争いは厳しいものになっただろう。天候が与えてくれたチャンスを活かし、戦略的にもうまくいった」

「チーム全体の努力が素晴らしかったし、特にチームメイトは最高の働きをしてくれた」

「これでシリーズ最大のイベントであるル・マンへ向けての準備もできた。残念ながら無観客でのレースとなるが、ここ何年も7号車が手の届かなかった悲願のル・マン制覇へ向け、全力を尽くしたい」

WEC第6戦スパで優勝を飾ったトヨタ7号車TS050ハイブリッド。

●セバスチャン・ブエミ(8号車)

「今日はチームとしていくつかのミスがあり、勝てるチャンスを逃すこととなってしまい残念だ」

「最初のピットストップでのタイヤ選択でミスし、その後もわずかな問題でタイムを失ってしまった」

「厳しいレースだったが2位でフィニッシュでき、チームのワン・ツー・フィニッシュに貢献できたのは良かった。次のル・マンではもっと良いレースができるよう頑張りたい」

●中嶋一貴(8号車)

「長いインターバル明けには厳しい、変わりやすい天候に翻弄された難しいレースでした。それだけに、2位に入ってチームのワン・ツー・フィニッシュの一端を担えたことには満足しています」

「私のスティントでは、セーフティカー明けから7号車との非常に接近したバトルとなりましたが、逆転には及びませんでした。7号車は本当に速く、勝利にふさわしい走りでした」

●ブレンドン・ハートレー(8号車)

「“スパ・ウェザー”もあってエキサイティングなレースだった。この難しいコンディションの中で、チームにとってはワン・ツー・フィニッシュという最高の一日となった」

「私はセーフティカーが導入される前の土砂降りの中でコースに出るという非常に難しい状況だった。どんなに目を見開いても視界は非常に悪く、大変だった」

「我々8号車としては、すべてが完璧ではなかったかもしれない。7号車は勝利に値する見事なレースを戦った。彼らに祝福を送りたい」

「我々にはまだ改良すべき点があるが、ル・マンへ向けた良いリハーサルになったと思う」

WEC第6戦スパで2位となったトヨタ8号車TS050ハイブリッド。

 WECの次戦は9月19〜20日、いよいよシーズン最大のイベントであるル・マン24時間レースを迎える。トヨタはTS050ハイブリッドにとっての最後のル・マンで、3連覇を目指す。

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