元気なソニーが帰ってきた!? 今度はクルマで勝負
聡明な読者は覚えているだろう。そう、新春いきなり自動車界のみならずIT界も賑わせた「ソニーがEV業界に参入?」のウワサだ。
裏付けは思いきりあって1月のハイテク見本市、ラスベガスCESであのIT企業のソニーが予告なしにEVコンセプトのヴィジョンSを発表しちゃったからしょうがない。当然そういう予測も生まれますわな。
2020年のCESで突如発表されたヴィジョンS! 当時の模様はコチラ▼
市販化できそうな体制&文句なしの完成度
しかも、実車のソニー ヴィジョンSがヤバかった。デザイン的に予想外にまとまっているだけでなく、製作担当はオーストリアの高級少量生産メーカー、マグナ・シュタイア。
既にトヨタ・スープラやメルセデスGクラスなどの外注仕事を請け負っているだけでなく、ボッシュなどの独大手サプライヤーもパーツを供給。この体制ならマジでソニーがEVを作ることも出来るっしょ! と妄想が妄想を呼んでしまったワケだ。
あれから約半年後の8月頭、突如ソニーがヴィジョンSを東京本社の敷地内で走らせ、同乗走行と同時に開発担当役員のインタビューをさせてくれるという。小沢は当然喜び勇んで品川に向かった。
テスラと高級車市場でガチンコ勝負の予感
試乗コースはソニー本社入り口の直径10mぐらいのオーバルコースもとい車止め。それだけに時速10kmも出れば御の字だったが、実力は十分確かめられた。
全長×全幅×全高は4895×1900×1450mmとテスラの高級EVセダン、モデルSよりひと回り小さい。
しかし外観はリアルで、オーバルを意識したデザインはもちろん、外の光でみると予想以上に塊感があってカッコいい。このまま出してくれないかな? の声もしきりだ。
ハイパワーなのは確実だが、中身はまだまだ試作車レベル
かたや乗ると若干拍子抜け。初期の試作車だけにドアの建て付け音が響き、走っても石畳の凸凹を如実に拾って車内がカタカタ鳴っている。
また、前後200kW(約270ps)の2モーターEVでシステム出力500psは出そうだが、わずか時速10km程度じゃ実力の片鱗も味わえない。当然、自動運転モードも試せてない……。
映画に音楽! お得意のエンタメ機能満載
だが、それでも感動はあった。まずはインパネ全面のほぼ映画館のような3連ディスプレイで、その外側には一体化したデジタルアウターミラーのモニターが。
運転席前は速度計を表示し、車両セッティングが出来そうだが、センターと助手席前は思いきり「ジュマンジ」を始めとするソニー・ピクチャーズの映画が楽しめ、そのほかソニー・ミュージックが抱えているアーティスト達の音源も楽しめる。
さらにどの席でもコンサート会場にいるかのような臨場感が味わえる360リアリティオーディオ。まさにソニーが車内空間をエンタテイメント化したらこうなる! の好例を見せ付けられた感じだ。
オーディオファン垂涎のツマミがイイ
フロントノーズのリボンのようなLEDラインは、スマホ連動でドアロックと同調して光が回り、スイッチのタッチはソニーの高級オーディオアンプのツマミのよう。今までの車載スイッチとは一線を画す味わいだ。
未来の技術盛りだくさん! ソニーが自動運転社会を現実にするかも
さらにソニー ヴィジョンSがスゴいのは先進安全用のカメラやセンサー、ライダーが全33個も備わっていることで、今後の自動運転時代を見据えた自作センサーで覆い尽くされている。
つまりヴィジョンSはソニーの車載用半導体センサー技術の動くショーケースでもあるのだ。
販売の予定なし! 日本発のサプライヤーとして活躍?
そして開発担当執行役員の川西 泉さんは「すいません、今のところ(市販化の)予定はございません」と改めて語った後に「クルマをITの目から見たら、新しい定義が出来るんじゃないかなと考えました」と説明。
ヴィジョンSは車載センサー技術と同時に車内エンタテイメントの良質な実験場であり、今後車両の販売こそしないが、よりリアルな公道走行実験をするつもりなのだ。
「車両実験で気づいた知見は多々あります」と言う川西さん。
つくづく自分で作ってみないとわからない自動車技術であり、自動&電動化の世界。そこに今後のソニーが踏み込み、新たなセンサー技術であり、エンタメ世界を作って行くということなのである。
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【筆者:小沢 コージ】