8月16日に開催された2020年MotoGP第5戦オーストリアGPの決勝レース9周目、ヨハン・ザルコ（エスポンソラーマ・レーシング）とフランコ・モルビデリ（ペトロナス・ヤマハSRT）が接触して大クラッシュを喫した。
そのとき、大破したマシンが飛び跳ねモンスターエナジー・ヤマハMotoGPのバレンティーノ・ロッシとマーベリック・ビニャーレスの前を横切るという非常に危険な状況が訪れた。直前に起きたクラッシュの状況とその後のレースについてヤマハファクトリーのふたりが振り返っている。
■モンスターエナジー・ヤマハMotoGPバレンティーノ・ロッシ（決勝：5位）
「とても怖かった。4人とも、とくに僕とビニャーレスは、本当に幸運だった。非常に危険な場面だったので、それを免れた僕たちは、今夜誰かに祈らなければならないね」
「誰もが全力で戦っているから、アグレッシブになることは良いことに違いはないけど、このスポーツはもともと非常に危険なものなんだ。僕たちはそのことを忘れてはいけない。とくに時速300kmで戦う時はライバルたちに敬意を払う必要がある」
「僕はすでに（ヨハン・）ザルコと話をしたけど、決して故意ではなかったと語っていた。彼はブレーキングでかなりワイドにはらんでしまって、時速300kmで走っていればスリップストリームが効くので、（フランコ・）モルビデリが速度を落とすことは不可能だったんだ」
「僕はビニャーレスと一緒に第3コーナーに入っていて、何かが僕に向かってくることに気づいた。そのときは実際によくあるヘリコプターの影かと思った。ところがモルビデリのマシンが驚くほどのスピードで僕を追い越していき、さらにザルコのマシンもモルビデリを飛び越えていったんだ」
「僕たちは非常にラッキーだったんだけど、こういった事故が将来、ライダーの振る舞いを正していくための教訓になってくれることを望むよ。モルビデリとも話をしたけど、彼は大丈夫。今は考えないようにしているけど、考えてしまったら彼も怖くてたまらないと思う。今回は結果的に誰も怪我をせず、全員が無事だった」
「しかし、もしも良くないことが起きていたとしたら、状況はまったく違うものになっていただろう。正直なところ、再スタートは簡単ではなかったけど、いいレースができた。チームと僕たちにとって、ここは楽な場所ではない。トップスピードでライバルたちに挑んでいくことが難しく、苦戦していたが、そのなかでもペースは良かったと思う」
「第9コーナーでビンダーに激しく仕掛けられてコースを外れてしまい、この間にトップから大きく離されてしまったのは残念。でもそのあともリズムよく走り、5位でチェッカーを受けることができた。もっと頑張れたかもしれないけれど、いいレースだったと思うよ」
マーベリック・ビニャーレス（決勝：10位）
「僕たちは非常にラッキーだった。このことがとても重要だよ。このようなアクシデントはレースのなかでは起こりうることで、常にリスクがあるんだ。そしてこの第3コーナーは、僕たちがいつも言っているようにとても危険なところなんだ。転倒が起こりやすい場所なので、何らかの解決策を講じるべきだと考えている」
「午前中のウォームアップで僕も転倒しそうになった。フロントがロックし、少し壁のほうに向かってしまったので怖い思いをした。しかし、レース中のあの事故では、正直、僕は何も見ていないよ。ただクラッシュしたマシンが地面を削る音が聞こえて、ザルコのマシンが壁にぶつかる衝撃を感じただけなんだ」
「そのあとで目を向けると、1台のマシンが僕に向かって来るのが見えたので頭を覆い、そのマシンは跳ね上がっていた。本当に、本当にラッキーだったよ。誰かが僕たちを救ってくれたんだ。そして、この結果がとても大切なことだろう」
「僕たちは今もチャンピオンシップの只中にいて、（ファビオ・）クアルタラロはわずかふたつ前でフィニッシュしている。第2レースではトラブルが出て後退し、ランキングトップに立つ絶好のチャンスを2度も失ってしまった。最初のレースでは15ラップ目まで待ってからハードプッシュするつもりだったけど、第2レースではマシンに問題が見つかり、その時にはもうレースは終わったと感じた。それでも3-4ラップコース上に留まり、そのうちにクラッチが復活してくれたので少しずつ挽回していったんだ」
