住宅購入「頭金なしで今」か「7年後35歳で頭金1500万」どっちが正解?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、28歳、会社員の男性。マイホーム購入を検討していますが、頭金をいくら用意すべきかでお悩みとのこと。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

家の頭金をいくら貯めるべきか。35歳までに1500万円を目標としているが、金額の妥当性や35歳までに発生する家賃を考慮した時に35歳より前に購入をすべきかなど、金額と期限について悩んでいる。

【相談者プロフィール】

男性、28歳、既婚(妻、28歳)

あなたの職業:会社員

同居家族について:妻は会社員で月収は手取り20万程度

住居の形態:賃貸

毎月の世帯の手取り金額:40万円

年間の世帯の手取りボーナス額:250万円

毎月の世帯の支出の目安:25万円程度

【支出の内訳】

住居費:5万円(給与控除)

食費:10万円

水道光熱費:2万円

保険料:1.5万円

通信費:2万円

お小遣い:6.5万円

その他:3万円

毎月の貯蓄額:15万円

ボーナスからの年間貯蓄額:200万円

現在の貯蓄総額:350万円

現在の投資総額:150万円

現在の負債総額:0


渡邊: こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。

家の頭金をいくら貯めるべきかのご相談です。35歳までに住宅の頭金として1500万円貯蓄の目標を立てており、それが妥当なのかどうかということです。具体的な金額目標を立てるのは素晴らしいことですが、目標を立てるにあたって、どうやら金額から入っているように見受けられます。金額だけで考えると、妥当性を導くのは難しいと言えます。まずはご夫婦にとってのライフプランを考えることから始めてみましょう。

ポイントは、住宅購入以外のライフプラン

ご相談者は、現在28歳の共働きのご夫婦です。今回のご相談では特に記載がありませんが、住宅以外に経済的な目標はないでしょうか。例えば、将来のお子さまや、趣味、旅行や自動車の購入などです。ご夫婦にとって、今すぐでないとしても、将来的に関わってきそうなものについては、考慮して考えていく必要があります。まずは、今一度ご夫婦でどのような生活を送っていきたいかを考えてみてください。

その上で、今回は特に住宅のみにフォーカスして、購入するタイミングと頭金の準備によって、どのような違いがあるかについてみていきたいと思います。

まずは、今すぐ28歳で購入する場合と、頭金をしっかり貯めて7年後の35歳で購入する場合の2パターンのメリットと注意点について考えてみましょう。

今すぐ購入する場合のメリット・デメリット

まずは「今すぐ28歳で購入する場合」についてです。

【メリット】
・早くから希望する家に住むことが出来る。
・今の金利が適用されるので、返済計画が立てやすい。
・返済が早く終わる。

【注意点】
・頭金が少ないので借入れ金額が多くなる。
・それに伴い、利息負担が大きくなる。
・家族構成の変化により、理想とする住宅の場所や間取りが将来変わる可能性がある。
・夫婦の働き方や収入の変化により、返済計画が変わる可能性がある。

7年後の35歳で購入する場合のメリット・デメリット

では次に「7年後の35歳で購入する場合」です。

【メリット】
・頭金をしっかりと準備出来れば借入金額が下がり利息負担が減る。
・その時の家族構成や仕事の状況に合わせた物件選びが出来る。

【注意点】
・計画的に繰上げ返済をしないとリタイア後も住宅ローンを返済しなければいけない。
・今より住宅ローン金利が上がっている可能性がある。
・今より物件金額の相場が上がっている可能性がある。
・買いたい物件に出会うまでに時間が掛かるケースもあるので、その場合購入年齢が上がってしまう。

利息の差をシミュレーションしてみると…

代表的なメリット・デメリットは以上のようなところでしょうか。頭金を準備するメリットは、借入金額を抑えることによる利息負担の軽減です。実際に、頭金を1500万準備することでどれくらい利息負担が変わるのかについてシミュレーションしてみましょう(前提条件:4500万の物件を購入。諸費用等は含む。住宅ローンはフラット35を利用)。

【パターン1】28歳頭金なし
借入額:4500万
金利:1.3%
借入期間:35年
毎月の返済額:133,416円/月
総返済額:56,035,132円
利息分:11,035,132円

【パターン2】35歳頭金1500万
借入額:3000万
金利:1.3%
借入期間:35年
毎月の返済額:88,944円/月
総返済額:37,356,755円
利息分:7,356,755円

単純に頭金を入れた場合とそうでない場合の支払い利息の差は、約370万円となります。
この金額を見ると、頭金を入れるメリットは大きいですね。

貯める間の住居費の考慮も忘れずに

一方で注意点もあります。
ご相談者の場合、これから頭金を貯め、目標は35歳とのことです。7年間あるので、その間賃貸に住むことを考えると、現在の家賃5万円/月×7年間で420万円ほどの住居費が掛かる計算となります。購入した場合も固定資産税やメンテナンス費用が掛かるので、一概には言えませんが、頭金を入れることによる利息軽減効果がほぼ無くなってしまいます。

金利が0.6%上がると頭金の効果は相殺される!

また、上記シミュレーションは7年後も金利が変わっていない前提でのシミュレーションです。仮に7年間の家賃を考慮せず比較した場合でも、もし7年後の金利が1.9%となっていると、下記のようになり、頭金を入れた効果は無くなってしまいます。

【パターン3】35歳頭金1500万、金利が0.6%上がった場合
借入額:3000万
金利:1.9%
借入期間:35年
毎月の返済額:97,846円/月
総返済額:41,095,387円
利息分:11,095,387円

物件価格の変動についても同様の事が言えるでしょう。

すなわち、住宅購入をする上で頭金を入れる効果は確かにあるものの、そのために「何年か貯めてから……」なんて言っていると、その間に世の中の金利や物件価格も変動するので、必ずしもメリットがある訳ではないということです。

結局、ベストタイミングとは…

大事なのは、冒頭に述べたように現段階での理想とするライフプランを描き、それに合わせた計画を立てること。住宅購入のベストタイミングは、希望するエリアと希望する家が自身の経済状況に見合った条件で見つかった時です。

ぜひ、専門家に相談をし、住宅以外の経済的な目標の金額や時期を考慮した上で、住宅購入の金額やタイミングを考え、理想の生活を実現していただきたいと思います。

© 株式会社マネーフォワード