アフターコロナでも幸福度が高いフィンランド その理由は”問題解決のための数学”にあり

コロナで、世界中の人びとの生活様式がガラリと変化しました。フィンランドも例外ではなりません。しかし意外にも、フィンランド人の幸福度は以前より高くなっているようです。なぜでしょうか? 今回はそんなフィンランドの、小学1、2年生の「数学(Math)」についての情報を共有します。

これまでの【フィンランド教育はなぜ子どもを幸せにするのか】はこちら

フィンランド人の幸福度は以前より高い

“新しい生活様式”に慣れるため、私たちは日々チャレンジしたり我慢したりしながら過ごしています。フィンランドでも状況は似ているようですが、現地の友人に聞くと、

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アフターコロナの社会の中で、フィンランド人の幸福度は以前より高くなっている

という風潮が強いようです。

その友人は、フィンランドの中でも歴史があり、社風はかなりコンサバティブな大企業に勤めています。上司(60代・女性)は、テレワークが始まった当初(2020年3月ごろ)は、出社しないと不便だわと嘆いたり、部下に頻繁に電話をかけて、チェックを入れたり……と日本でもよく聞くような状況だったようです。

しかし最近では、週に1、2度の出社時には「ねえ、テレワークっていいものね!」と、現在のワークスタイルに満足している様子を見せているそう。

社会の様子や家族のあり方、住居スタイルなど、日本とフィンランドでは多くの相違点はありますが、私が過去に現地に住み、フィンランドの人たちとつき合う中で感じたのは、

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変えられない状況を嘆くのではなく、どうアレンジしたらいいかにフォーカスする

という、“問題解決にフォーカスするのが得意”な点が、フィンランドの幸福度がアップした要因の一つではないかと感じました。

ちなみにフィンランド(その他北欧諸国にも)には、“悪い天気というのは存在しない、悪い服装というものがあるだけ”という、ことわざがあります。どんな天気でも(大雪でも、マイナス数十度の寒さでも)自分で服装や装備を整えれば快適に過ごせるといった考え方が、このことわざに表れていると思います。

今回はそんな話にも少し関係する、フィンランドの小学1、2年生における教科の一つである「数学(Math)」についての情報を共有します。

「数学(Math)」をどう捉え、そのタスクを何としているか

The task of the subject of mathematics is to support the development of the pupil’s logical, precise, and creative mathematical thinking. Teaching and learning lay a foundation for understanding mathematical concepts and structures and develop the pupil’s ability to process information and solve problems.
“数学”は、子どもが論理的に・正確に・クリエイティブに考え、情報処理し、問題解決するための基礎を築くことをサポートするためにある。

フィンランド教育では、数学をこのように考えています。計算や数式はもちろん、ツールとして大切にされていますが、「何のために使うのか」が重視されています。

The instruction supports the pupils’ positive attitude towards mathematics and their positive self-image as learners of the subject. It also develops their communication, interaction, and cooperation skills. Studying mathematics is a goal-oriented and persistent pursuit where the pupils take responsibility for their learning.

さらに、“自分は数学を使って問題解決ができる!”という自分の能力に対してのポジティブな視点や、問題解決を通して子どものコミュニケーションスキルや対人スキル、協力スキルを育てることを視野に入れて、教育が行われています。

ここまでで、日本の小学校で受けてきた「算数」のイメージとは少し違うかな?と思われたかもしれません。ここから先は、現地の様子や教材の写真を通して、フィンランドの“数学”の世界観を感じてもらえたらと考えています。

フィンランドでは、6歳はプリスクール
小学校は7歳からだが、小学校でもしっかりと“数字”の概念から学ぶ
“生活の中での数学”―時間と学校生活
“生活の中での数学”―時間と学校生活
フィンランドの小学校で広く使われている“算数ブロック”はシンプルながら3次元に組み立てることもでき四則演算に対応できる優れた逸品!
“生活の中での数学”―さまざまな“100”を見つけよう
“生活の中での数学”―お金は、算数だけでなく生活科や倫理の学びにも活用できる
“生活の中での数学”―身長を測りながら、長さと数字の関係を学ぶ
“生活の中での数学”―家から持参した容器の体積を量ってみよう
ある雪の日には、外から雪を入れてきて溶けて後の量について学んでいた
ある教室で。1,10,100,1000を視覚的に理解するための模型
フィンランドにあるシュタイナー学校のノート。シュタイナーではフィンランドの国の教育方針に従いながら独自のカリキュラムをもって運営されているが、より“体感する” ことに重き置いた教育をされている印象
“計算だけではない、数学”―升目を2つに分けてみよう!どんな分け方でも、たくさんのバリエーションで。
“計算だけではない、数学”―たくさんのバリエーションで、3つに分けてみよう!
“計算だけではない、数学”―たくさんのバリエーションで、3つに分けてみよう!
番外編。学期末の演劇でも、数字を使ってシーンを表現したり立ち位置を決めたりと “数学”の学びを積極的に使っていた

フィンランド数学の教科書

教室で使っているツール。2019年に訪問したあるクラスには、全員の机に同じシートが貼ってあった
左上から「長さを示すスケール」「10のマス目」「いくつと、いくつに分かれるかな?マシン」「あなたの名前」「アルファベット」。効率的で感動

このすばらしいツールを使っているクラスの先生は、フィンランドの中でも有名な教科書出版社「Otava」で、2年生用の数学教科書を執筆しています。

以下の写真で、フィンランドの教科書の一部を紹介します。

ピザやぶどう、単体ではいくらかな?(出典:Otava, Tuhattaituri 2a)
同じように描いて、色を塗ってみて!(出典:Otava, Tuhattaituri 2a)
付録の“算数セット”は日本のものより簡便。(出典:Otava, Tuhattaituri 2a)

学びと自分を一体化させる

よく日本の子どもたちは、「勉強して何になるの?」と聞きます。自分もそう思ったことがあります。

学ぶことのほんの一部であっても、「生活の中で計算ができてうれしい」「問題解決が自力でできて自信がついた」「時計が読めて、一日の計画が立てられるようになった」…… そんな経験や体験があると、学びと自分が一体化し、ポジティブに感じられるのではないでしょうか。

そんなことを、フィンランドのカリキュラムや今回紹介した写真に触れることで、理解しました。

次回は、フィンランドの小学校1、2年生における、カテゴリー化された「学びのねらい」「学ぶ内容」と”Transversal Competences(前回までの記事に詳細を書きました)”がどう関連しているのかについて明確に書きたいと思います。

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