悪意はなくとも差別を助長…「ブラック企業」の言葉のイメージは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。8月4日(火)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、国際弁護士で元裁判官の清原博さんが“言葉の持つイメージ”について述べました。

◆「ブラック企業」という言葉は黒人差別を助長!?

悪質な働かせ方をする企業や問題のある会社を「ブラック企業」と呼びますが、"ブラック”という言葉を使うことに異論が出ています。日本在住の黒人などからは、「黒=悪」「白=善」というイメージの新しい造語が広がることを不快に受け止める声があり、意図はなくても差別を助長しかねないとの指摘も上がっているということです。

これに関しては賛否両論あり、清原さんは「この場で結論を示すのは難しいテーマ」と前置き、「こういった政治的な中立性は"ポリティカル・コレクトネス”と言って、アメリカなどでは昔からよく言われていたこと」と説明。

日本でも、過去には「肌色」という色がありましたが、現在は人種によって肌の色が違うことから他の言い方になっています。それだけに清原さんは、「言葉というのは悪意があって使っているわけではないけれど、時代と共に、価値観の変化によってその言葉が相応しくなくなることがある」と明言。

清原さん曰く、「ブラック企業」という言葉は2000年代初頭にネット上に出てきた言葉で、2013年に流行語大賞に選ばれたことで世間に普及。当初からこの言葉に対して黒人差別という意識はなく、「むしろ過酷な労働環境で辛い思いをして働いている方々の権利を守りたいと、そのためにブラックという言葉を使ってわかりやすく表現されたと思う」と清原さんは推測。

しかし、それも20年という時が経ち、アメリカでは黒人差別に対する反対運動も高まっている今では、「ブラック企業という言葉が適切かどうか、我々は考える時期にきている」と言います。

◆"ブラック(黒)”は差別的言葉なのか?

MCの堀潤は「ブラック企業」は法令に違反していたり、人の尊厳を傷付けるような働かせ方をしているだけに、その名称も「非人道企業」など「現状に照らし合わせた概念に置き換えてもいいと思う」と意見。すると清原さんは、「おっしゃる通り、もう少し適切な言い方はあると思うが言葉は難しい……」と言い、この日の提言として「言葉は人によって作られるが、人は言葉によって人となる」と主張。

つまり、ブラック企業という言葉の背景には労働環境をよくしたい思いがあるものの、「その言葉が1人歩きしてしまうとブラックという言葉が悪いイメージだと刷り込まれてしまう」と危惧。さらに、それが浸透すると「黒人などに対しても悪いイメージを最初から持ってしまう。特に子どもたちがそう思い込んでしまったら危険」と清原さん。ブラック企業という言葉を改めるべきかは判断できないものの、「しっかりと差別はダメだと教育していく、社会全体で啓発していかなければいけない」と強く訴えていました。

manma代表の新居日南恵さんは、日本のことだけでなく「"ブラック”に対する他国のイメージも考えたほうがいい」と主張。というのも、例えばアメリカではブラックという言葉が持つ意味は大きいから。「差別的に使われてきた歴史があり、そういった過去を持つ人たちが傷付くことに思いを馳せていくことが大事」と言います。

また、キャスターの宮瀬茉祐子は言葉のイメージに関してはどこに標準を合わせるべきか「絶対に答えは出ないと思う」と言い、「一概に色で善悪を決めるのは難しい。使う人がその言葉のイメージを敏感に捉えるしかないと思う」と話していました。

番組では、視聴者に「『ブラック』『黒』のイメージは?」というテーマで生投票を実施。結果は以下の通りです。

◆「ブラック」「黒」のイメージは?
よい……618票
悪い……1,380票
わからない……822票

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

© TOKYO MX