プラスチックの成形加工を手掛ける「東京千曲(ちくま)化成」(川崎市中原区)が、マスク着用時に使用する器具「インナースペーサー」を開発した。鼻に装着することでマスク内に空間(スペース)が生まれ、張り付く不快感や熱がこもるのを軽減できる。同社の坂本猛社長(59)が入院している寝たきりの父親(91)をふびんに思い、考案した。坂本社長は「器具によって、マスクを外す機会を少しでも減らすことができれば」と期待している。
器具は縦4.5センチ、横9センチ。ベースはプラスチック製で、肌に触れる部分が樹脂製。鼻を覆うように装着し、その上からマスクを着ける。不織布やウレタンなどマスクの種類を選ばず、耐久性も高く、洗って繰り返し使用できるという。
きっかけは、高齢で入院している父親だった。
新型コロナウイルス感染症の影響で、入院患者も院内でマスクを着用しているが、父親は両手が動かせず、自分で取り外すことができない。その姿から、マスクと口の間に一定の空間を確保できる器具を思い付いた。
感染が拡大し始めた2月ごろから開発を始め、試作品を経て、7月末に商品化にこぎ着けた。今月1日の発売開始以来、既に4千個近くを販売。大手保険会社が社員向けに購入を検討しているという。お年寄りにも使ってもらおうと、同社は市内の老人ホームや介護施設などにも寄付した。
坂本社長は「器具を装着しても、鼻が赤くなったり、荒れたりしない」と説明。「感染拡大の防止に役立ててほしい」と呼び掛けている。
器具はソフトタイプとハードタイプがセットで868円(税・送料込み)。同社のホームページなどで購入できる。また9月からは一般の店舗でも販売する予定。