ジオパーク認定目指す五島市 小中学生向け学習会に、“ジオ素人”の記者が参加してみた 噴火再現実験に歓声 火山の“内側”に興味津々

 五島列島が有する地質や地形、自然環境などの日本ジオパーク認定を目指す五島市。昨年度の審査では、理念や目標が市民に浸透していないとの指摘を受け、認定を逃した。今春、情報発信を担う専門員2人を外部から迎え、来年度の再挑戦に向けて「分かりやすさ」を追求しているという。果たして現状は-。小中学生向けの学習会に、“ジオ素人”の記者も参加した。

 同市福江島の北西約4キロにある嵯峨ノ島。この周囲約9.5キロ、人口約100人の火山島が学習会の舞台だ。5日午前、定期船で上陸し、市立嵯峨島小中の全児童生徒4人と合流した。
 まずは校内で座学。「嵯峨島は火山の噴火でできた。火山から出てくる物はいろいろあって…」。専門員の一人、高場智博さん(31)が説明を始めた。ドロドロの「溶岩」、火山灰や石、ガスなどが混じる「噴煙」の2種類に大きく分けられるという。

噴火の再現実験に取り組む子どもたち=嵯峨島小中

 続く実験では、水に沈めた嵯峨ノ島の模型に2本の管を通し、重さを変えた赤と緑の液体をそれぞれの管に注入。模型から液体が噴き出し、子どもたちが歓声を上げる。「ここに『しましま』ができたよ」。高場さんが指した水槽の底を見ると、赤と緑の層ができていた。“地層”だ。
 地質に詳しいもう一人の専門員、安永雅(まさる)さん(39)によると、嵯峨ノ島は、火砕流に似た「火砕サージ」という現象で運ばれた灰や小石などと、溶岩でできている。実験は、噴煙が山の斜面を滑り、積み重なる様子を再現したという。
 学校を離れ、アコウの巨木が生えた崖や平らな岩場が広がる海岸「千畳敷」を見学。露出した焦げ茶色の地層は、男岳(151メートル)や女岳(130メートル)の火口から噴き出た火山灰などが積み重なってできた。なるほど実験のおかげでイメージしやすい。千畳敷は、波や風が岩を複雑に削り出した独特の景観。別世界に迷い込んだようだ。

火山灰や噴石が何層にも重なってできた千畳敷。波で削られてできた洞窟もある=五島市、嵯峨ノ島

 最後に嵯峨ノ島の周囲を船で一周。西側は偏西風による荒波で男岳や女岳が削られた断崖で、安永さんは「火山の断面が見られる貴重な場所」と説明する。マグマが冷え固まった白っぽい岩や、千畳敷などにあった焦げ茶色の地層、それが高温に熱されて赤く酸化した堆積物が、複雑に入り交じる。火山の“内側”を見るのは初めてだ。

波風に削られた女岳西側の断崖。焦げ茶色や赤茶色、白っぽいの岩石などが入り交じっている=五島市、嵯峨ノ島

 参加した小学5年の吉田幌舵(こうた)君(11)は「岩が赤いのが不思議」、弟で3年の健助君(9)は「ポットホールができるのに、どれくらい時間がかかるんだろう」と、自分たちが暮らす島に興味津々。記者も、市内に無数にある島々がどうやってできたのか、少し気になり始めた。
 市はユーチューブアカウント「五島列島ジオチャンネル」でも解説動画を配信中。

© 株式会社長崎新聞社