自己表現を目指す〝ドラァグクイーン〟たち 写真家ヨシダナギさんが個展 東京、横浜、名古屋で

 女装をすることによって自己表現を目指すドラァグクイーン。そんな彼女たちに魅せられて、フォトグラファーのヨシダナギさんは写真作品を創作する。ニューヨークとパリのクイーンたちを活写した作品で構成する個展「DRAG QUEEN No Light, No Queen」が東京の西武渋谷店で開かれている。(共同通信=中村彰)

「PURPLE QUEENS」

 アフリカの少数民族をテーマにした、鮮やかな色彩の作品で知られているヨシダさん。5歳の時にテレビでマサイ族を取り上げた番組を見て「超カッコイイ」と心に刻み、いつか自分の肌の色が変わる日を心待ちにしていた。10歳の時、お母さんから「アンタは、ああいうふうにはなれないの!」と現実を告げられ、絶望を味わった。

 だが、アフリカへの思いは募るばかり。独学で写真を学び2009年、初めて単身でエチオピアの地に降り立った。その後、マリ、ブルキナファソ、ジブチなどを歴訪。写真集「SURI COLLECTION」「HEROES」などに結実した。

 クイーンに出会ったのは1本の映画。1994年、オーストラリアで製作された、3人のドラァグクイーンがバスに乗って旅をするロードムービー「プリシラ」だ。「ドラァグクイーンだったら会ってみたいな」と、プロジェクトが動き始めた。

「PACHAMAMA」

 まず引かれたのが、彼女たちの立ち姿の美しさ。そして「自由な発想にあふれ、心の器がでかい。すごく魅力的」と感じるようになった。「自分がやりたいことをやっているときが、その人が一番輝くとき」だと気付き、その瞬間を切り取るよう心掛けた。

「Paris-Calender」

 ロケハンや撮影場所の選定、背景の作り込みなどには時間を掛けた。だが、撮影はスピーディー。ライティングセットに5分、テストに10分、撮影は1カット15分、3カットで45分という早業だ。

作品の前に立つヨシダナギさん=東京・西武渋谷店

 撮影が終わった今、こう考える。「いろんな文化があって、『あなたはあなた』と認めることはとても大事だと思う」

 ※西武渋谷店では30日まで。巡回予定は次の通り。10月8日ー18日、そごう横浜店 10月31日-11月15日、松坂屋名古屋店

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