小さな駅前のビッグな鉄道ミュージアム

比地大駅のホーム側から見たKトレインワールド

 【汐留鉄道倶楽部】香川県三豊市のJR予讃線比地大(ひじだい)駅前に、鉄道ミュージアムカフェ「Kトレインワールド」が昨年9月オープンした。同じ四国の土讃線琴平駅を模した建物で天井瓦がオレンジ色、外壁は白色。建物を囲むように実際に乗って楽しめるミニ鉄道(線路幅89㎜と127㎜)がぐるりと敷設されている。比地大駅は小さな無人駅で、あたかもミュージアムが駅舎のように見えてしまう。

 館長は比地大駅に近い観音寺市出身の木川泰弘さん(63)。話を聞いてみると「60年前に親に買ってもらったプラレールで遊んだことが鉄道趣味の原点」で、長く鉄道グッズの収集を続けてきたという。地元の高校在学中にインターハイ棒高跳びで2年連続優勝。1974年のテヘランアジア大会では金メダルを獲得した経歴を持つ。

 大学卒業後は教職員として働いていたが、定年退職を機に集めてきた3千点以上の鉄道グッズを展示する博物館建設を決断。多くの支援者の協力を得て3年がかりで開業にこぎつけた。

 ミュージアムの目玉は四国の名所をふんだんに盛り込んだHOとNゲージによる大ジオラマ。江戸時代に造られたという観音寺市の銭形砂絵「寛永通宝」や、南米ボリビアのウユニ塩湖のような絶景写真を撮ることができる三豊市の父母ケ浜(ちちぶがはま)をかすめるように日本中の車両が走り抜ける。木川さんの遊び心で母校の中学校も作り、校庭には棒高跳びをする本人らしき人形を配するというきめ細かさがにくい。

(上)鉄道趣味の原点プラレール。アジア大会の金メダルと共に展示されている、(下)大ジオラマにある木川さんが卒業した中学校。校庭に棒高跳びをする本人の人形が

 展示物もレアものだらけ。特急、急行のヘッドマーク、行先板、座席などが所狭しと置かれ、鉄道ファンのみならずとも楽しめる。鉄道シミュレーションゲームもあり、マスコンを使って速度を調整するなど運転士気分を堪能できる。筆者も挑戦したが、車とは比較にならない微妙な操作で走らせていることを痛感した。

 台湾の鉄道ファンの聖地として知られる彰化県の「福井食堂鉄道文物館」の陳朝強館長との10年来の交流が実を結び、今年6月には友好姉妹店協定を締結。台湾の鉄道グッズも多く展示し、鉄道を愛する者同士で相互交流・日台友好を目指している。

 現在、新型コロナウィルスの感染拡大で日本と台湾との間は自由に行き来ができない。だが、いずれ状況が改善したら双方でスタンプラリーやイベントを開催して日台鉄道ファンの友好の花が咲くことだろう。

 JR四国と観光列車「四国まんなか千年ものがたり」を貸し切り運転する共同企画も構想するなど、木川さんの熱い思いの夢は果てない。

 特急「しおかぜ」が高速で通過する小駅前の夢あふれるミュージアム。館内で煎れたコーヒーの味は格別だった。わたしの妻の実家が香川県にあることから頻繁に帰省していることもあり、「Kトレインワールド」から当分目が離せないでいる。

 ☆共同通信 斎藤義光

 ※汐留鉄道倶楽部は、鉄道好きの共同通信社の記者、カメラマンが書いたコラム、エッセーです。

 

「Kトレインワールド」の連絡先

〒769-1501 香川県三豊市豊中町比地大2509-8

TEL 050-7115-6203

© 一般社団法人共同通信社