近鉄「楽」リニューアル車で素敵な前面展望を フリースペースや階下室も充実し、より華やかで居心地の良い車両に

リニューアルされた団体専用列車20000系「楽」

2020年8月19日(水)、リニューアルされた「楽」の報道陣向け試乗会が行われました。

団体専用列車「楽」とは?

リニューアル前の「楽」 写真:PIXTA

20000系「楽」(読みは「らく」)は1990年11月23日に運転を開始した近畿日本鉄道(以下、近鉄)の団体専用列車です。「あおぞら号」にかわる近鉄の団体旅客輸送のニューシンボリックカーとして、「明るく、清潔で、かつ楽しい雰囲気である車両」を目指し設計・建造されました。

4両編成で、車両端部は二階建。展望席を備え、中間2両は床が通常より高いハイデッカー構造を採用。どの車両に乗っても大きな窓から美しい沿線風景が楽しめる素敵な列車……なのですが、団体専用のツアーや修学旅行等に用いられる列車なので、乗車経験のある方はあまり多くないかもしれません。参考までに、「楽」の年間運行日数は約100日、年間利用人員は約20,000人です。

リニューアルの経緯やコンセプトを解説

漆メタリックの塗装でイメージを一新

近鉄の広報担当者によれば、一般的には車両新造後約20年で車両の内外装更新を実施するそうですが、「楽」は先に述べた理由から特急車両や通勤車両と比べて走行距離も短いため、通常より若干遅く30年ぶりにリニューアルが行われることになりました。

リニューアルコンセプトは「地のにぎわい」――奈良・京都・伊勢志摩など沿線5地域の魅力を日本の伝統色と和柄で表現し、外装や座席など車両全体に用いています。

塗色は日本古来より使用されている漆をモチーフとした「漆メタリック」で、新しい「楽」のロゴやアクセントとして散りばめられた5種の和柄でイメージを一新。

「楽」のロゴも新しく
散りばめられた和柄 鹿子模様をベースに緑青の色で名古屋を表現
黄蘗(きはだ)色と天平の和柄で奈良を表現

内装も大きく手が加えられ、中間車両は前後のシート間隔を30cmほど拡大し天然木の大型テーブルを設置。また両先頭車両には「楽 VISTA スポット」という名前のフリースペースが設けられました。1号車・4号車階下室のフローリングには床面に天然木の材料を使用しており、これは近鉄としては初めて。

2号車(中間車両)の見通し 各座席のシートは全て新製した
中間車両は前後のシート間隔を91cm→121cmに拡大し、天然木の大型テーブルを設置 座席は転換クロスシートで、リクライニングはしない
4号車の「楽 VISTA スポット」
4号車階下室(フリースペース) 靴を脱いで利用できる
1号車の階下室にはあの「人をダメにするソファ」も……

その他の設備としてはフリーWi-Fi、コンセント、大型荷物置き場、車いす対応トイレ(3号車)などを新たに備え、新型コロナウイルス対策も踏まえ車内全体に抗ウイルス、抗菌加工を施しています(車内の空気は空調装置により概ね10分で入れ替わります)。

各座席部にコンセントを設置
大型荷物置場は各車両に設置
車いす対応トイレは3号車に設置されている

なお、老朽化したパーツの補修や取替などは実施されましたが、新しい機構の導入は行われていません。工事費は約1.9億円、リニューアル工事は2020年3月16日~8月17日にかけて行われました。

展望席が楽しい!

1号車の展望席 運転台手前のスペースが「楽 VISTA スポット」

今回の試乗会では大阪上本町から近鉄名古屋まで移動したのですが、その際に一番「いいな」と思ったのがこの1号車の展望席です。

ガラス窓の配置や大きさなどはリニューアル前と変わりませんが、座席を一部撤去して作られた「楽 VISTA スポット」では、ソファやスツールに座りながら前面や側面の大きな窓から3方向のダイナミック・パノラマビューを堪能できるようになっており、車両のすれ違いなどを存分に楽しめるようになっています。中学の修学旅行でこういう列車に乗れたら最高ですよね。席は取り合いになるかもしれませんが。

もちろん他の座席も眺めが良い。窓の外を眺めると意外な車両と出会えたりするのが嬉しい

今後は8月21日に有料試乗会、9月5日に青山車庫で有料撮影会が行われる予定ですが、これらは申し込み開始当日に定員に達してしまったそう。その他にもクラブツーリズムの旅行商品としてリニューアル「楽」に乗るツアーなどが募集されていますので、気になる方は近鉄主催のツアーや旅行会社の情報を要チェックです。

文/写真:一橋正浩

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