罰則があるのに法律がない…コロナ禍で揺らぐ日本の法の支配

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。8月6日(木)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、弁護士の金塚彩乃さんが“コロナと法の支配”について述べました。

◆日本入国後のホテル待機、破ると罰則適用!?

法の支配とは、「国、政府、国家が法という国会で議論してみんなで決めたルールに服するかどうか」であり、「それが近代国家の一番のルール」と標榜する金塚さん。しかし、このコロナ禍においてはさまざまな対策が必要であり、それを承知の上でも「(新型コロナは)心配だけど、ルールは何でもいいというのは別の問題」と言います。

金塚さんが問題視していることの1つが「検疫法」です。仕事があった金塚さんは、7月30日にフランスから帰国。羽田空港で抗原検査を行い、陰性だったので空港から出られたそうですが、空港ではさまざまな書類が配られ、その1つが検査の手順。検査自体は「さすが日本、無駄がなくスムーズで、PCR(検査)ではなく唾液の抗原検査だけで検査も楽だし、1時間くらいで終わった」と振り返ります。

そして、渡された書類のなかには申告書もあり、そこには「公共交通機関に乗りません」、「待機場所のホテルから14日間出ません」という制約とともに、破った場合には6ヵ月以下の懲役あるいは50万円以下の罰金という罰則が大きく書かれていたとか。

これは検査中にもしばしば伝えられたそうですが、弁護士である金塚さんすら若干の恐怖を覚え、どんな法律が適用されているのか調べたところ、検疫法36条の規定による罰則はあるものの、厚生労働省令などどこにも14日間待機しなければならないとはなかったと言います。

◆法を作る国会が開かず……揺らぐ法の支配

では、もし待機場所のホテルから出てしまった場合はどうなるのか。罰則があるだけに逮捕されそうですが、禁止する法律はありません。新型コロナには潜伏期間があるだけに金塚さん自身「できる限りルールは守りたい」と話していましたが、ここで問題となるのが「罪刑法定主義というすごく基本的なルール」。

罪刑法定主義(憲法31条)とは「犯罪と刑罰は法律で決められなければならない」ということで、似たような法律があってもそれで処罰をしてはいけない「最低限のルール」。それだけに今回の制約に関しても「医学上の必要性があっても法律でちゃんと定めるべき」と金塚さんは言い、さらには「法律を作るのは国会だけ。しかし、国会自体が開けという要請があっても与党、政府が応じていない。法律というルールもなしにいろいろなことが動いてしまっているのは『法の支配』の面でも非常に問題」と警鐘を鳴らします。

フランスの元法務大臣で7月まで人権擁護官を務めていたジャック・トゥーボン氏は、「恐怖で自由を壊してはならない、きちんとした真実と知識が必要」と主張していたことを紹介。そして金塚さんは、法律で規制するとなると内容を吟味し、許容量を議論しますが、「みんなが(それぞれ個人で)考えなければいけないとどこまで我慢しなければならないか、我慢比べになってしまう」と不安視。

金塚さんは、「明確なルール、最低限のルールを作って守れば、みんなで監視し合う必要もない」と主張。ホテルでの待機生活は快適としつつも、「(制約を)守ることは守るけど、ちゃんとしたルールを作るべき」と改めて訴えていました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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