「MaaSで働き方改革」日本マイクロソフトが語る未来の可能性

日本マイクロソフトが「MaaSに取り組む」と発表したのは2018年。国内におけるMaaS元年と言われる2019年を前に、社会実装を目指した取り組みが全国各地で少しずつ動き始めた時期だった。

これら黎明期のMaaSプロジェクトは、たとえば交通課題の解決、あるいは観光地の活性化などを掲げる取り組みがほとんどで、現在に至るまでその傾向は続いている。

そんな中、日本マイクロソフトが打ち出すMaaSの取り組みは、「働き方改革の促進」という独自の視点で語られる。

MaaSを導入するとなぜ働き方改革につながるのか。そして、彼らが描く未来予想図はどのようなものか。日本マイクロソフトのMaaS推進キーマンである清水宏之氏に話を伺った。

日本マイクロソフト株式会社
MaaS & Smart Infrastructureソリューション本部
専任部長 清水 宏之氏
撮影:NewsPicks(モビエボ)

なぜマイクロソフトがMaaSを?

――2年前、日本マイクロソフトが「MaaSへの取り組みを開始する」という発表を聞いたときは率直に驚きました。

――モビリティサービス以外ではどうでしょう?

清水氏:

JR東日本が駅で展開するブース型のシェアオフィス「STATION BOOTH

」とも連携しています。

※JR東日本は2019年から駅ナカシェアオフィス事業「STATION WORK」を都内主要駅などで開始。個室型ブースの「STATION BOOTH」やコワーキングスペース「STATION DESK」を展開している。

JR東日本の「STATION BOOTH」設置イメージ
(出典:PR TIMES)

――つまり、日本マイクロソフトはMaaS事業者にとってシステムインテグレート、あるいはソリューション提供を行う立場ということでしょうか?

清水氏:

はい、われわれはプラットフォーマーとして表に立つことはしません。事業者への支援を通じてMaaSの発展に貢献する考えです。サービス利用する側と交通サービスを提供する側を結びつける縁の下の支援ができればと思っています。

両者を結ぶという視点から見ると、MaaSによる働き方改革を推進することが接点になるのではないかと思っています。

混雑を「把握する」から「予測する」へ

――今後の展開を考えた場合、新型コロナの影響を考えるのは避けられません。その点はいかがでしょう?

清水氏:

交通事業者によるサービスを考えたとき、今後はユーザー側からすると混雑をいかに回避するかというニーズが出ますよね。今、駅とか車両の混雑状況がオープンデータで見えるようになってきていて、それを利用して先ほど示した予定表に混雑状況を表示できるようになれば、遠回りでも混雑していない交通手段を選ぶなどの選択につなげることが可能です。ポストコロナを考えると、次のステップは混雑緩和ができるようなサービスが求められると思います。

もう一つは、リアルタイムの混雑状況ではなく、混雑予測です。経路検索の履歴をもとに今後の動きを予想する他社の事例などもありますが、未来の情報は限られますからこれはすごく難しいんです。そこで、予定表の活用という方法があります。

例えば仕事の予定を入れるときは、明日の予定や1カ月先の予定を入れるわけですから、それを収集すると混み具合がある程度分かります。企業活動の予定を外部に公開するのは企業のセキュリティポリシーがあるので一筋縄ではいかないところもありますが、こうした方法で未来の混雑予測ができる可能性があります。

――混雑する時間帯が前もってわかれば、個人が避けるだけでなく事業者側で緩和させる施策も取れますね。

清水氏:

そうですね。交通事業者からユーザーに向けて、混む時間帯の利用を避けて一駅歩いてくれたら割引しますとか、そういうレコメンドをするのもいいかもしれません。

また、これからは従業員への定期券支給を廃止する企業も出てくると思います。交通事業者にとっては固定収入が減少しますので、代わりとなる収入をどう確保していくかという観点で考える必要があります。その際、MaaSのサブスクリプションモデルは一つの可能性です。

ただ単純に交通だけだと今までの定期券と何が違うんだという話になるので、さまざまな関連サービスとの連携も積極的に提案を続けていきます。

(インタビュー/井上佳三、記事/和田 翔)

© 株式会社自動車新聞社