所属別に序列 なぜ? 職場、萎縮する声 長崎県警ハラスメント調査結果

ハラスメントのアンケート結果について「上位」と「下位」の所属名が内部公表された(画像の一部を加工しています)

 長崎県警は7月、組織内でのハラスメント根絶を目的に実施したアンケート結果の一部について、所属(警察署や本部所属の課・隊名など)を評価が高い「上位」と低い「下位」にランク付けして内部公表した。これに対し回答者からは、職場環境の悪化を不安視し萎縮する声が漏れる。長崎労働局は「所属が出ると、嫌でも上司や周囲が気になる。適切なやり方ではない」と指摘する。

 「所属名が発表されるなんて知らなかった。これでは匿名アンケートなのに、書きたいことも書けなくなる。ランキングにする意味があるのだろうか」(20代男性警察官)
 「下位所属の部署では、一種の犯人捜しの雰囲気になっていると聞く。正直、発表直後は職場の雰囲気もどこかピリピリしていた」(30代女性警察官)
 「正直、困惑している。順位を並べることが悪い方向に作用しかねないのでは」(40代男性警察官)
 セクハラやパワハラなどのハラスメント行為をなくそうと、県警警務課が昨年、全職員を対象に任意の匿名アンケートを始めた。ランク付けで発表したのは「ハラスメントを許さない職場の雰囲気が醸成されているか」と尋ねた項目の回答結果について。各署と本部の課・隊ごとに「上位」と「下位」の各5所属を並べて明記している。
 同課によると、アンケートは本部や各署内で「ハラスメントに発展しかねない兆候を見聞きしたことがある」など約20項目の質問を設定。今年は既に2、6月に実施しており、2月実施のアンケートでは上位所属名のみ発表したが、「上だけ載せても意味がない」として方針を変更。同課幹部は「ハラスメントは行為者に当事者意識がなく、意識喚起のためにも職場全体の問題として捉えてもらう必要がある。これまでに発表に対する疑問や意見は届いておらず、問題があるとは考えていない」と説明する。今後も適宜、アンケート内容などの改善を検討し、ハラスメント防止に取り組むという。
 長崎労働局雇用環境・均等室の担当者は「法律的には問題がなく、アンケート自体には意味がある」と前置きした上で、「当事者意識を持たせるのであれば、例えばアンケートに寄せられた被害の相談内容を匿名で一部抜粋するだけでも十分効果はある。所属名を出すことでハラスメントがなくなる見込みは低く、逆に職場環境が悪化するリスクが考えられる。現状のままだと最悪の場合、アンケートそのものがパワハラ行為になりかねない」と懸念を示す。


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