TCRヨーロッパ開幕戦:ホンダ・シビック連勝。ドイツから急遽転身のハルダーが値千金のデビューウイン

 開催直前にWTCR世界ツーリングカー・カップのレギュラー、ネストール・ジロラミのゲスト参戦が決まるなど、総勢24台が集結したTCRヨーロッパ・シリーズの2020年開幕戦。8月22〜23日にフランス・ポールリカールで開催された2レースは、ともにFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRが制し、初戦はダン・ロイド(Brutal Fish Racing Team)が、続く最終ヒートは、直前にTCRドイツ・シリーズからの“ワケあり”シリーズ・スイッチを決めていたマイク・ハルダー(Profi Car Team Halder)が、デビューウインを飾っている。

 レースウイークの水曜に急遽、PSS Racing Teamのシビックをドライブすることが発表されたジロラミがいきなりFP2最速をマークし、メディ・ベナーニ(アウディRS3 LMS/Comtoyou Racing)やペペ・オリオラ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/Brutal Fish Racing Team)、ヒュンダイ勢ではBRC Racing Teamのマット・オモラ(ヒュンダイi30 N TCR)にダニエル・ナジー(ヒュンダイi30 N TCR)、さらにアンドレアス&ジェシカのバックマン兄妹(ヒュンダイi30 N TCR/Target Competition)、そしておなじみのDHLカラーのホンダ車に乗るトム・コロネル(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/Boutsen Ginion Racing)と、2020年のヨーロッパ・シリーズには世界戦レベルの有力ドライバーたちが揃った。

 そのドライバー陣を前に、レース1に向けた予選をリードしたのはTCRシリーズのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)公式テスターを務めた経験もある初代UKシリーズ王者のロイドで、Q1早々にターゲットタイムを記録し、コロネルも続いて早くもシビックが1-2体制に。

 しかし、バックマン兄妹の妹ジェシカが終盤にトップタイムを更新し、チェッカー時には兄のアンドレアスも2番手に飛び込むなど、ヒュンダイ勢が食い下がってトップ10進出のQ2へ進むと、ル・カステレの路面改善が進み全車が大きくタイムアップ。2番手アウディのベナーニ、3番手ロイド、4番手ジロラミを抑えてポールポジションを獲得したのは「キャリアのなかでも最高の部類に入るアタックラップ」と語った地元フランス出身のジョン・フィリピ(ヒュンダイi30 N TCR/Target Competition)となった。

 これでTCRヨーロッパ参戦後初の最前列スタートとなったフィリピだったが、レース1のスタートでわずかに反応が遅れると、その背後にいた3番グリッドのロイドが抜群のダッシュを決めて1コーナーへ。

 サイド・バイ・サイドで並んだフィリピは行き場を失いランオフへ逃れると、トラック復帰時にはベナーニのアウディにも先行され早くも3番手へと後退してしまう。

総勢24台が集結したTCRヨーロッパ・シリーズの2020年開幕戦はフランス・ポールリカールが舞台に
R1はスタートでわずかに反応が遅れたジョン・フィリピに対し、その背後にいた3番グリッドのダン・ロイドが抜群のダッシュを決めて1コーナーへ
スタートの攻防を制したロイドが「世界的に困難な状況で迎えたレース、勝てて格別の思いだ」と語れば、2位メディ・ベナーニも「今後の展開に期待が持てる」と自信を見せた

■翌日のレース2もシビック優勝。マイク・ハルダーがデビューウイン

 表彰台争いはこのアクションが最終的な決定打となり、10周のスプリント勝負はトップ3台がほぼトレイン状態でフィニッシュ。ロイドが2020年オープニングレースで「感動的な結果」を手にし、ベナーニ、フィリピが並ぶポディウムに。

 その背後には4位テディ、6位ジミーのクレーレ兄弟(プジョー308TCR/Team Clairet Sport)に挟まれる形でジロラミが初参戦で5位フィニッシュ。

 6番手争いの集団にいたバックマン兄妹とオリオラは、全員がダメージを被る断続的バトルで、7位の兄アンドレアス以外はトップ10リザルトを失う結末となっている。

 明けた日曜のレース2は、前日トップ10リバースグリッドで最前列についたハルダー兄妹の兄、マイクが千載一遇の好機を活用。

 2016年の創設時からTCRドイツ・シリーズを主戦場として来た兄妹は、現WTCR王者ノルベルト・ミケリスもゲスト参戦したニュルブルクリンクでの2020年第2戦で、レース後の失格裁定に抗議の意思を示すべく、物議を醸す“シリーズ電撃撤退”を表明。その数日後には妹とともに、開幕目前だったヨーロッパ・シリーズへのフル参戦プログラム移行を発表していた。

 リバースポールから発進のマイクはわずかに出遅れたものの、フロントロウに並んでいた18歳のサミ・タウフィク(アウディRS3 LMS/Comtoyou Racing)がジャンプスタートの裁定を受けたため、オープニングラップでセーフティマージンを得ることに成功。

 その後方では集団バトルの末にテディ・クレーレのプジョーをパスしたジロラミが2番手に浮上し、そのまま10周のチェッカー。「自分のレースペースが信じられない気分だった。これは間違いなく、僕のレーシングキャリアで最も価値のある勝利だと言える」と語ったマイク・ハルダーが、2位ジロラミ、3位テディ・クレーレを従えて、シリーズ移籍デビュー戦を値千金のライト・トゥ・フラッグで飾っている。

 これでロイドがシリーズ首位に立ち、ベナーニが追う展開となった2020年のTCRヨーロッパ・シリーズ。続く第2戦は3週間後、9月12〜13日にベルギーのゾルダーで争われる。

前日トップ10のリバースグリッドで最前列についたハルダー兄妹の兄、マイクが千載一遇の好機を活用。「この転身を実現してくれたすべてのメンバーに深い感謝を捧げたい」
急遽の参戦ながらさすがの実力を発揮し、R2で2位を得たネストール・ジロラミ。「1周目のアグレッシブさが良い方向に出た」
「本当にタフなレースでだったが、アンドレアスとは真にクリーンなバトルが楽しめた」と、シリーズ初表彰台を獲得したテディ・クレーレ

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