会社員は“税金弱者”、税理士が教える「節税」と「税制優遇制度」

確定申告する機会がほとんどない会社員は「税金弱者」になりやすい、と「税理士YouTuberチャンネル!!」のヒロ税理士(田淵宏明)さんはいいます。しかし、会社員でもできる節税があります。有効活用できる制度もあります。その内容を聞きました。


会社員は「税金弱者」になりやすい

――会社員の節税について伺いたいのですが、そもそも会社員は税金関係に詳しくない人が多い印象です。

そうですね。その原因は、確定申告する機会がほとんどないからだと思います。所得税法では、収入がある人は全員確定申告することになっています。ただし、会社員は特別で、税金や社会保険料などを会社があらかじめ精算し、源泉徴収後の給料を受け取ります。納めすぎた分は年末調整で還付されます。

そのような手続きを会社の経理の人たちが頑張ってくれているため、会社員は確定申告する手間がかかりません。その反面、楽だからこそ無頓着になりやすく、税の知識が少ない「税金弱者」になりやすいのです。

――経営者も自営業者も会社員も、儲けがあれば税金が発生するという基本的な仕組みは同じですか?

はい、同じです。自営業者を例にすると、取引先から受け取る売り上げがあり、そこから仕事をするためにかかった必要経費を引き、利益を計算します。この利益に税率をかけて税金が決まります。

法人も同じで、モノやサービスを売って売り上げができ、人件費や設備投資などの経費があり、残った利益に税金がかかります。

会社員はこのような流れが見えにくいのですが、「額面」と言われる金額が売り上げに相当します。

――会社員の経費に相当する金額はどうなっているのですか?

経費については給与所得控除という仕組みで計算しています。その分を引いて残った金額が手取りです。

会社員の場合、経費というと「会社が出してくれるお金」というイメージが強いかもしれませんね。飲み代などを「経費で落とす」というと「会社のお金で飲む」と理解する人がほとんどだと思います。

一方、税法上の経費は、売り上げを得るためにかかる原価、コスト、固定費などのことを指します。会社員の場合、会社員として働くための経費がかかっています。その負担を加味して、所得に応じた一定の金額を給与所得控除として引く仕組みになっているのです。

別居の親も扶養家族になる

――ずばり聞きますが、会社員に節税の余地はあるのでしょうか。

節税の点から見ると、個人事業主や経営者と比べて会社員が節税できる余地は小さく、現実には「ほぼない」と言って良いと思います。
ただ、生命保険や地震保険の保険料や医療費などは一定の条件を満たすことによって控除の対象となりますので、きちんと申告することで節税につながります。

保険料については年末調整の時に保険会社から証明書が送られてきますので、忘れずに会社に提出します。医療費は年間の医療費が10万円を超えた場合に、超えた分が控除対象となります。これは会社の年末調整では処理されませんので、自分で確定申告して控除を受ける必要があります。

また、高齢の親などの生活費を面倒見ている場合は、別居の場合でも扶養家族に入れることができます。会社で年末調整する際、「扶養控除等申告書」に親の名前や年齢などを書いて提出することで、控除が受けられる場合があります。

――別居の親でも良いのですね。

はい。扶養控除の対象となる人の要件として「生計を一にする」という言葉が出てきます。
これが誤解の原因だと思うのですが、生計を一にするというのは生活費が共通という意味で、同居しているという意味ではありません。

親が69歳以下なら38万円、70歳以上なら48万円の控除が受けられますので、生活費や療養費を送るなどして支援しているのであれば忘れずに申告して控除を受けた方が良いでしょう。

――自己申告せずに見落としたり忘れたりする控除は意外とあるかもしれませんね。

そうですね。節税とは多少視点が変わりますが、家を買った時の住宅ローン控除や、売却した時の3,000万円控除(※居住用の家などを売った時の所得を最高3,000万円まで控除ができる特例)なども忘れずに活用してほしいと思います。

NISA、iDeco、ふるさと納税でもっとお得に

――会社員でも活用できる税制優遇の制度があることがわかりました。より積極的に制度を使うために、どんな方法がありますか?

投資や資産形成に興味がある人なら、NISAやiDecoを検討してみると良いかもしれません。

NISAは、証券会社や銀行のNISA専用口座で株や投資信託を運用するもので、年間120万円まで投資でき、その年から数えて5年目の年末までに得た利益が非課税になるNISAと年間40万円まで投資でき、その年から数えて20年目の年末までに得た利益が非課税になるつみたてNISAがあります。この2つはどちらかしか使えませんが、年単位で切り替えができます。

通常の投資では利益に20.315%の税金がかかりますので、あくまでも運用益が出た場合ですが、NISAやつみたてNISAの非課税は大きな効果が見込めると思います。

iDecoは個人型の確定拠出年金で、自分で金額を決めて個人の年金として積み立てていくものです。積み立てた金額は全額所得控除の対象となり、所得税の節税分は年末調整の時、住民税の節税分は翌年の住民税に反映されます。また、NISAと同様、iDecoの運用で得る利益も非課税です。

――NISAやiDecoは資産作りや年金の準備という目的があるため節税とは少し視点が違うかもしれないですが、活用メリットは大きそうですね。

大きいと思います。最近はふるさと納税も人気です。ふるさと納税は、納税という名前がついていますが、全国各地の自治体から寄付先を選んで寄付することです。寄付ですので寄付金控除を受けることができ、それが結果として節税につながります。また、寄付の見返りとして地方自治体から特産品などがもらえますので、返礼品で寄付先を選ぶ楽しさもあると思います。

ふるさと納税の寄附金控除となるのは自己負担額の2,000円を超えた部分です。通常、控除を受けるには確定申告が必要ですが、会社員の場合、年間の寄付先が5カ所以下であれば「ふるさと納税ワンストップ特例制度」という制度を使うことで確定申告が不要になります。

ちなみに、寄付関連では、国、地方自治体、認定を受けているNPO法人などへの寄付も寄附金控除の対象になります。控除を受けるためには確定申告が必要ですので、忘れずに申告するようにしましょう。

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