激戦区大阪で奮闘 母の出身地を応援 五島つばき商店

「日本、世界から見た五島という視点が大切」と話す平田さん=大阪市北区

 全国チェーンの飲食店や激安スーパーなどが軒を連ねる大阪市北区天神橋3丁目の商店街に、異彩を放つ店がある。五島つばき商店。一部上場企業を脱サラした平田大(まさる)さん(37)=大阪府岸和田市出身=が、母の出身地・五島を応援しようと、都会の激戦区で2018年1月に創業した。厳しい競争に加え、新型コロナウイルス禍にも直面するが「どう差別化して勝っていくのか。試行錯誤の繰り返しだが、今こそ五島や長崎の外で売り上げを高めたい」と奮闘を続ける。
 人通りの多い通りに面した店の入り口に、島の景勝地の写真をあしらった「長崎 五島列島-」の看板。県や五島市の「産品応援店」の認定を受けている5坪(約16.5平方メートル)の店内に、福江島を中心とした農水産加工品やうどん、酒、島のPRグッズが所狭しと並ぶ。どれも大阪では珍しい品ばかりだ。
 母が五島市三井楽町出身、祖母は今も島に住んでいる。自身のルーツである離島を盛り上げ、恩返ししたいと創業した。「もし(ルーツが)壱岐だったら壱岐、対馬だったら対馬の商品を扱ったはず。日本、世界から見た五島という視点が地方創生の鍵だ」と、島外出身者の目から見た島の魅力を大切にする。
 現在、島の取引先は約30カ所。母の人脈などを生かして、生産農家や加工会社、酒蔵、製麺所などを開拓した。創業当初は、野菜の価格が高騰していた中で、島から仕入れた安価な白菜などがヒット。月約150万円を売り上げた。昨年は、形や長さがふぞろいで安く仕入れられた五島うどん、関西よりも旬が早い五島産イチゴなどが、中国人らによく売れた。
 「ちょっとでも面白いと思ったら試しに作ってもらって、売ってみる」と、取引先と連携しての商品開発も手掛ける。うまくいかなかった品もあるが、業務用の焼きあごや、つばき油せっけん、五島が舞台の漫画「ばらかもん」に登場する漬物「このもん」などには手応えを感じた。
 コロナ禍が深刻化した今春以降、商店街のイベント中止も相次いで客足は激減。これまで多くの客に五島をPRし、約20人が実際に訪れたと報告してくれたが、今は「『行って』と言いづらい」という苦しい状況が続く。それでも「集客が見込めなければ店を閉めてアルバイトするだけ。1人だから何とかなる」と笑う。
 先行きは不透明だが前向きな意欲は尽きない。「可能性がある限り諦めない。島だって大変。島を残さないといけないと強く感じている」-。熱い言葉が、次々と口をついてあふれた。
 問い合わせは五島つばき商店(電090.1156.4048)。

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