日本中を沸かせたハウンド・ドッグ、いまなぜ誰もその名を口にしないのか? 1985年 8月25日 ハウンド・ドッグのアルバム「Spirits!」がリリースされた日

ハウンド・ドッグ、シンプルこの上ないロックンロール!

どうにも不可解だ。なぜ、誰もその名を口にしないのか? 世にいう “ロック好き” なら敬遠するバンドというものがあるらしい。

中学から高校にかけての或る時期、僕はハウンド・ドッグのファンだった。いや、ファンなんて生易しいものじゃない。それは信仰だった。僕は信者だった。

ずっとずっと以前のあの頃、「ROCKS」で目が覚め、バラードで寝についた。日中は「ff(フォルティシモ)」が頭の中を流れ続けた。中古で全アルバムを買い揃え、足繁くライブに通い、会場で腕を振り上げ高校生・男児・異性愛者の僕が「コーヘー(大友康平)!」と絶叫し、「♪ あーいが、すべーてさ」と合唱した。シンプルこの上ないロックンロールとマッチョな男性ヴォーカルを僕は崇拝していた。

それなのに。何にでも終わりはある。流行は過ぎ去り、熱は冷め、以後人前では努めてその名を口にしない。

一体となって「ff」を熱唱、日本武道館での15日連続コンサート!

かつて酒の場でのこと。うっかり若気の至りの想い出話をしてしまった。にぎやかだった場が急に静まり、ロック談義は中断され、皆が眼をそらし、空気が重く感じられた。やってしまった…。

それにしても、あの頃のハウンド・ドッグは、コンサート会場の頂点であった日本武道館での15日連続コンサートを開催して大いに日本中を沸かせていた。“ロック好き” でも、その場にいた人は少なくないはず。

断言できる。僕だけではない。あそこではみんなが一体となって「ff(フォルティシモ)」を熱唱した。教祖様に心酔していた。

だから不思議なのだ。僕の周りにはどうしてハウンド・ドッグ好きがいないんだ?

※2017年11月15日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: ジャン・タリメー

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