コロナの検査が何種類もあるのワケ。PCR、抗体、抗原検査、一番信頼度が高いものは?

新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。毎日のニュースやワイドショーには、もうウンザリされている人も多いと思いますが、いつ、だれが検査を受けることになってもおかしくありませんね。

今回は、検査についての正しい知識と受け方、公費負担と自費負担の違いなどを解説したいと思います。万が一、検査を受けることになっても、安心感が違いますよ。


いくつもの検査の種類がある特殊性

最初に出てきた検査はPCR検査でした。その次に抗体検査が出て、さらに抗原検査が出てきました。これはわかりにくいですね。一つの病気でこれだけたくさんの種類の検査が行われること自体珍しいし、短期間に世の中に普及すること自体が珍しいのです。大規模に流行する感染症の場合緊急性を重視して、十分な評価でなくても学術雑誌に掲載されたり、市場に投入されることが国際的にも許容されています。それでは一つ一つ説明していきましょう。

一番誤診の可能性が低いのはPCR検査

2月以降、毎日のようにこの言葉を聞くようになり、よくご存じの方も多いでしょう。PCRとは、「ポリメラーゼ連鎖反応」のことで、体内にウイルスの遺伝子があるかどうかを調べる検査です。

鼻からのどの奥に綿棒を突っ込んで、採取した粘液を用いて検査をします。その中に含まれるウイルスの量はほんのわずかなので、そのままでは検査ができません。そこで、遺伝子を検査室の中で数時間かけて増やしてから測定します。

検体に遺伝子の材料を加えて、遺伝子のコピーを作るのには時間がかかります。しかしながら、コピーの作り間違いということは原理的にあり得ないので、「PCRで陽性だけど実は間違いでした」ということはありません。一方、最初の遺伝子の量が少なすぎると、感染しているけれど陰性の結果が出てしまうことがよくある、という弱点があります。

この検査は、遺伝子の量さえあれば、少なくとも感染していない人を誤診して感染していると判定することはありません。このため、現在は新型コロナウイルス感染症の確定診断方法となっており、一番信頼されています。6月2日からは唾液を用いたPCR検査も、発症後9日以内の人を対象に可能となりました。

抗体検査では、「今感染しているか」は分からない

抗体検査は、5月頃行われるようになった血液検査です。抗体とはコロナウイルスに感染した後、免疫反応によりウイルスを排除するためにできる物質で、その多さを調べます。

抗体が陽性になるのは、発症後2週間以降と言われています。つまり「今」感染していることを調べる検査ではなく、「過去」に感染していたかどうかを調べる検査です。

コロナウイルスに感染した人が他人に感染させうるのは、発症前(感染しているけれど症状がまだ出ていない)から発症5日目までと報告されています(JAMA Internal Medicine May 1, 2020, doi:10.1001)。つまり、他人に感染させる時期にはまだ抗体はできていないので、その時期に抗体検査をしても必ず陰性になります。

したがって、抗体検査は「この人を出勤させてよいか?」の判断には使えません。「陰性証明書」を要望する会社があると言われていますが、それは抗体検査ではダメなのです。

抗体検査は感染流行を調べるのに向いている

抗体検査は過去の感染(もう治ったこと)を表す検査なので、ある地域で、住民がどのぐらい感染したかを調べるために行政が行う調査(サーベイランス)としての利用をWHOは推奨しています。個人の診断目的では推奨していません。

一度感染して治癒した後、再感染するリスクがないのかを確認するために、抗体検査を繰り返して受ける方がいるようですが、このような利用法はあるかもしれません。しかし、免疫反応というのは抗体に代表される液性免疫だけではなく細胞性免疫というものもあり、抗体が陽性から陰性になったから再感染するとも一概に言えないのです。

確定診断もできるようになった抗原検査

抗体検査と間違われがちなのが、抗原検査です。抗原とはウイルスやアレルギー物質など、体に免疫反応を起こす物質を指します。新型コロナウイルスの抗原検査の場合は、ウイルスを特徴づけるたんぱく質を調べます。

似た検査としてはインフルエンザの抗原検査があり、受けた経験がある方も多いと思います。この検査のメリットは、15~30分程度で検査結果が出ることです。

ただしPCRに比べると感度が落ちる(病気にかかっているのに陰性の結果が出てしまう)と言われていましたが、発症9日以内であればPCRとの一致率が高いとされています。そこで、鼻からのどの奥の検体を採取した場合は、PCRと同様に確定診断(陰性であれば、感染していないと判断する)として扱って良いということになっています。

同じ抗原検査も、唾液による検査はそれよりも精度が落ちますが、採取しやすいことから普及しています。

どこでどんな人が受けられるのか?

公費、つまり無料で検査を受けるには条件があります。感染を疑う症状がある、渡航歴がある、感染者との濃厚接触があるといういずれかに当てはまる人が、PCR検査と抗原検査による行政検査(費用は公費負担)の対象です。

これまでは濃厚接触者であっても症状がなければ検査の対象外でしたが、7月17日より検査の対象になりました。「もしや?」と思ったときは、保健所の「帰国者・接触者相談センター」や、かかりつけ医、地域の相談窓口にまず電話で相談してください。

公費検査の条件に当てはまらくても検査を受けるには?

皆さんいろいろ事情があって、どうしても検査を受けないといけない場面はあると思います。リスクの高い高齢の家族や小さい子供と同居しているのに、職場に感染者が出たら…検査を受けたくなりますよね。

この場合は、私費でPCR検査や抗原検査を受けるしかしょうがありません。インターネットで対応してくれるクリニックを探してみて下さい。PCRの場合、費用は数万円かかります。ただし、PCR検査であれ抗原検査であれ、絶対に正確ということではないことは承知の上で。

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