大川栄策「さざんかの宿」ザ・ベストテンにおける伝説のタンス担ぎ! 1983年 1月6日 大川栄策のシングル「さざんかの宿」がザ・ベストテンに初登場した日

タンスを担ぐ大川栄策「さざんかの宿」で謎の演出!

昭和の歌番組と言えば『ザ・ベストテン(以下、ベストテン)』だろう。高視聴率を誇る番組なうえにテレビが一家に1台という時代にあって、ベストテンが放送される毎週木曜21時には、多くの家庭でチャンネルを合わせていたことだろう。私の家もそうだった。そんな中でも、私にとっても印象深い、ベストテン “伝説” の演出について語ってみたい。

歌は「さざんかの宿」。1982年8月1日に発売された大川栄策の代表曲だ。発売してからは着実にセールスを伸ばしながら1983年1月6日放送回で8位にランクイン! ベストテンで歌うことになる。

私の記憶の中に強烈に残っているのが、今も語り継がれる謎の演出。初登場から3週くらいした頃の放送だったと記憶しているのだけれど、大川栄策が「さざんかの宿」を歌っている最中で、なんとタンスを担いだのだ!!

この謎の演出… いまやもう伝説になっているようだが、リアルタイムで観た当時は違ったのではないだろうか。21時からの放送で、どの家庭でも夕飯の時間だったり、くつろぎの時間だったり… しかし当時は、誰も何も思わなかったのだろうか、タンス担ぎは、そんなに話題にならなかったような覚えもある。

TBS「ザ・ベストテン」でのお約束、なんともシュールな光景…

なんかこう、普通にご飯を食べながら、何の疑問も持たず、間奏で大川栄策が舞台に置かれたタンスを担ぐ、なんともシュールな光景… それを当時の私は素直に受け入れ観ていたのだ。「さざんかの宿」の歌詞は、他人の奥さんに恋をしてしまう男を描く物語…「♪ 愛しても愛しても人の妻」としみじみと歌う中、いきなりタンスを担ぎ始める。

私の記憶では、番組内で初めてタンスを担いだのは、「大川さんと言えばタンスの産地のお生まれで」みたいな話から始まり、大川栄策が「そうなんですよ。タンスを担ぐにはコツがあってですね~」といった流れに。そして「それでは、持ってもらいましょう」と振られた大川栄策がタンスを担ぐ。担ぎ終わったあと「タンスもね、こうやって担げば意外に持てるもんなんですよ。火事とか何があるかわからないですから皆さんもね」…といった感じで締めくくられ、その後「さざんかの宿」を歌ったと記憶している。

で、次の週から「今週も特技のタンスを担いでもらいましょう」と用意されるようになって、結果的に毎週毎週間奏中にタンスを担ぐのが “お約束” として定着していった。実際、タンスはかなりの重さなのに、それに加え、他人の妻を愛してしまい苦しい… みたいな世界を歌っていた大川栄策。当時子供の私も思った「なんてシュールなんだ」と。

歌の途中でタンスを担ぐ、謎の演出は伝説に!

後年、何かのバラエティ番組がこのタンス担ぎについて大川栄策本人に聞いていた。そこでは「いやぁ、あの時は毎週毎週重かったなぁ」と苦笑していた大川栄策だったが、それをリアルタイムで観ていた一人としては、「そりゃ重いでしょ…」と即座に突っ込んでいた。

インターネットの時代になって、このタンス担ぎが大人になった私みたいな一部の連中の間で話題となり、“何で歌いながらタンス担ぐんだ?” といった突っ込みが散見された。それでいて、みんな子供の頃は “何の疑問も持たず普通にベストテンを観てた” という旨の書き込みが多かったのも印象に残っている。

これは、当時の私たちが、謎の演出を自然に受け止めていた… ということなのかもしれない。そしてあとになってジワジワと蘇ってくる記憶として、私を含めたリアルタイムで「さざんかの宿」を観た人たちの心に生き続けたのだと思う。だから、歌の最中にタンスを担ぐ… っていう演出は、本当に伝説の演出だったんだな、と思ったりします。だって、たまに居酒屋で「さざんかの宿」が流れると、「タンス担いでみようかな…」と思ったりする私ですから。

カタリベ: 鳥居淳吉

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