長崎県内44ダム「事前放流」可 洪水の危険性低減 県、関係市町と治水協定

時前放流のイメージ

 長崎県は27日、県などが管理する36水系の44ダムで、大雨による河川の氾濫などを防ぐための「事前放流」ができるよう、利水関係者や関係市町と治水協定を今月中旬までに結んだと発表した。事前放流で44ダムの治水容量は従来の1.5倍に増える。

 近年増加する豪雨災害を受け、国が昨年12月に「既存ダムの洪水調節機能の強化に向けた基本方針」を公表し、今年4月に事前放流ガイドラインを示した。県も5月からガイドラインを基に各市町などと協定締結へ向け協議を進めてきた。
 事前放流は、大雨が降る前に放流してダムの空き容量を増やし、洪水の危険性を低減させる措置。各ダムごとに定めた基準を気象庁の予報雨量が超える場合に、水道や農業利水用の貯水を低水放流管などを使って3日前から河川に流す。
 県によると、計画規模を超える降雨でダムの水位が上昇した際の「緊急放流」とは違い、県内のダムでの事前放流は、ほとんどが毎秒1~2トンの放流になるため河川の急激な水位上昇の危険性はない。長崎市の神浦ダムでは事前放流で治水容量は約2.5倍、同市の式見ダムは約2.4倍に増やすことができるという。
 事前放流は、気象庁の予報を基に県や利水関係者が決定。防災無線や各メディアなどを通じて、流域住民などへ周知する。県は本年度中に、さらに2~3ダムについて協定を結ぶ予定。浦瀬俊郎県河川課長は「台風接近が多くなる時期を迎える。治水協定に基づき、必要な事前放流を確実に実施し、各河川の災害発生の防止、軽減につなげたい」と話した。

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