突発的なスタメン抜擢や代打起用 DeNAラミレス監督の選手起用にある根拠

DeNAのアレックス・ラミレス監督【写真:荒川祐史】

横浜スタジアムと相性のいい大和、中井、宮崎…

今季で就任5年目となるDeNAのラミレス監督。投手の8番起用や送りバントをあまり使わない戦術など、その采配は奇抜に見えることもあるが、徹底したデータ主義者であることも、最近ではよく知られてきた。そのラミレス監督がよく口にするのが、選手と球場の相性だ。

8月25日の広島戦では「横浜スタジアムでいい数字を残している」という理由で、今季初めて2番に大和を起用。翌26日にも同じ理由で9番に中井をスタメンで起用した。事実、数字を見ると8月27日終了時点で打率.270の大和は、横浜スタジアムでは.286をマークし、古巣である甲子園の.429の次にいい成績を残している。

中井の場合は今季の打率.300の打率に対して、横浜スタジアムは.345。出塁率(.433)と長打率(.556)を足したOPSは.989と一流のスラッガー並みの数字になる。その他、今季、横浜スタジアムで高打率を残しているのが神里で打率.290に対して、横浜スタジアムでは.368。神宮球場での.385という数字も目立つが、ナゴヤドームで.111、その他の3球場ではノーヒットと極端な数字が出ている。

レギュラークラスの選手で言えば、打率.308の宮崎が本拠地で.346、現在は離脱中だがオースティンも打率.320に対して横浜スタジアムでは.421と抜群の強さを誇る。今季4番に定着した佐野も.330と横浜スタジアムで高打率を残している。

逆に今季、打率.240と不振のロペスは、横浜スタジアムでも.231と数字が悪い。打率.273のソトも本拠地では.266、本塁打もわずか2本とホームの利を活かせていない。

投手に目を移してみれば、先発陣でチーム最年長の井納が2勝2敗と勝ち星には恵まれないが、防御率2.48と安定した成績を残す。マツダスタジアムでは2試合で0.75とさらにいい数字。今季の井納が登板した球場は前述の2球場に東京ドームを加えた3球場のみだが、昨季も地元ではシーズン防御率よりも1点以上少ない数字をマークしており、指揮官がスタジアムを選んで起用している典型と言えそうだ。

逆に梶谷やロペス、ソトは敵地での相性に優れている

リリーフ陣ではエスコバーが13試合で防御率0.00、石田も11試合で防御率0.96と抜群の相性を誇っている。逆に本拠地での成績が思わしくないのが、今季は防御率5.87と不振で守護神の座を外された山崎。本拠地での防御率は11.12と目も当てられない状況だ。山崎は昨季こそ横浜スタジアムで1.72と年間防御率を上回る数字を残しているが、2018年は5.08、2016年も5.50と1年おきに5点台を記録しており、苦手なスタジアムと言わざるを得ない結果となっている。

ビジター球場を見ると今季1番打者として復活した梶谷が甲子園で.375、マツダで.333と、自身の地元(島根県)に近い西の球場で高打率をマーク。横浜スタジアムで振るわないロペスは、かつての本拠地・東京ドームで.429と抜群の強さを誇り、神宮球場でも.346と、こちらは東の球場を得意としている。神宮ではソトも3試合の出場で3本塁打、8打点、打率.538と大当たりしており、マツダスタジアムでも5試合で.409と相性がいい。

準レギュラークラスの選手では、打率.263、横浜スタジアムで.250の柴田がマツダスタジアムで.400、ナゴヤドームで.385と特定の球場で好成績。マツダスタジアムでは主砲の佐野が.421、梶谷が.333、準レギュラークラスでも倉本が.444と好成績を残している選手が多く、今季の敵地での対戦成績が3勝1敗1分と好相性の要因となっている。

現役時代に380本塁打を放ったラミレス監督は「どんな選手でも、この球場ではフィーリングがいい、と感じることがあるもの。自分も現役時代にそうだった。この球場なら、誰が投手でも打てそうということがあった」という。自身の得意だった球場としては東京ドームと神宮球場を、相性の悪い球場として甲子園球場を挙げる。

「それぞれのいいイメージ」を考慮しての選手起用。突発的にも見えるスタメン抜擢や代打起用など、批判を受けることも多いラミレス采配だが、データを見ると“その理由”が浮かび上がってくる。(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

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