大分トリニータ 正念場を乗り越える鍵は選手の主体性

 リーグ戦5連敗後の3試合を1勝2分で乗り切り、一時期の不調を脱した感がある。もちろん、予断を許さぬ状況に変わりはないが、9月の14節FC東京戦から始まる7連戦で好スタートを切れば、下位争いから目標の6位に近づくことも十分に可能である。

 

 フロントは、けが人やコンディション不良により固定メンバーで戦えていないなかで、「苦しみながらも、ブレることなく立て直している」(西山哲平G M)と評価。その最大の理由は、チームがピッチ上で勝ち点以上のポジティブな内容のサッカーを見せていたからだ。片野坂知宏監督は「(対戦相手によって)狙いを理解しチャレンジできている。メンバーを代えざるを得ないなかで、組み合わせや、J1レベルで良いパフォーマンスができるかを見極めることができた」と振り返る。

 

 個の能力差を補うために組織で戦う大分は、緻密な準備をして試合に備える必要がある。中2、3日の連戦では、戦術を落とし込む練習は限られる。ならばとスカウティング(対戦相手の分析)を絞り込んだのだが、これまではそれが裏目に出ていた。鈴木義宜は「狙いが絞り込まれたことで、そればかりを意識するようになってしまった。みんなマジメなので決められたことを実践しようとして柔軟な考えを持てなかった」と話す。サッカーは、目まぐるしく戦況が変化するなかで“選手の判断”が重要になるのだが、チームとしての狙いを優先してしまった。鈴木は「狙いと状況は違うのにロボットになってしまった」と明かす。

 

連敗中は「柔軟な考えを持てなかった」と語った鈴木義宜

 例えば攻撃においては、以前ならば「相手の変化を見て隙を突く」という意識が強かった。ただ、連敗していた頃は、相手のプレッシャーが少ないサイドに起点をつくって攻撃することを意識し過ぎ、攻撃が単調で停滞したケースが多かった。鈴木は「背後を狙わずサイドに(ボールを)持っていくことばかり考えていた。中を使いながら外を使ったり、外を使って中を使ったりの使い分けができなかった」と反省する。

 

 連敗中のミーティングで片野坂監督から「(ピッチの中にいる)選手たちで判断してほしい」との話があり、何をすべきで何をしてはいけないかということよりも、状況に応じた自分の判断が優先されるようになった。もう一度、全員でコンセプトを明確にしたことで、「自分たちのサッカーに磨きをかける」(鈴木)との思いが強くなった。

 

 片野坂監督の頭の中で、信頼できる大枠のメンバーが固まった。「見極めは必要になるが、元気な選手でやり繰りしたい。(メンバーを)固定することで連係面はよくなる」。今後も目の前の試合に対して戦い方を明確にし、判断は選手に委ねながら「タフに粘り強く戦うこと」を求める。結局のところ選手たちが主体的に対応していくしか方法はない。そしてそれを乗り越えた先に成長がある。このまま沈むわけにはいかない。リーグ戦は3分の1を過ぎたばかりだ。

 

連敗を脱し、チームの雰囲気は良い

 

(柚野真也)

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