DeNA井納の強攻策の理由 ラミレス監督はV打にご満悦「広島戦で打ってる」

DeNA・井納翔一【写真:荒川祐史】

4回1死一、二塁、打者・井納にバントでなく強攻→逆転二塁打

■DeNA 3-2 広島(27日・横浜)

DeNAは27日、横浜スタジアムで行われた広島戦に3対2で勝利し、カード勝ち越しを決めた。先発の井納が6回途中2失点で5勝目。4回に自ら決勝点となる逆転の2点二塁打を放つなど、投打に渡る活躍が光った。

1点ビハインドの4回、井納が今季3本目となる逆転打を放ち、自らに勝利をもたらした。この回先頭の細川が安打で出塁し、嶺井は三振に倒れたが、続く柴田の打席で細川が二盗に成功。今季初スタメンとなる4年目の22歳が打撃だけでなく、足でもアピールした。柴田が四球を選び、1死一、二塁で打者は井納と、セオリーなら送りバントの場面だったが、ラミレス監督の指示は強攻だった。指揮官は「もちろんバントも考えたが、これまでの歴史を見ても、井納は広島戦ではかなり打っているので、強攻策でいくことにした」と理由を説明したが、失敗すれば、また批判を浴びるのは必至とも思える作戦だった。

これはデータなのか、ラミレス監督ならではのひらめきなのか。無謀とも思える作戦が最高の結果に変わった背景には、打撃コーチのアドバイスがあった。ラミレス監督は「前にもこういうことがあったが、坪井コーチが素晴らしいアドバイスをしてくれて、井納がそれをしっかり守ってくれたので、いい結果になった」とコーチに感謝した。

当の井納は「打席に入る前から、バントはないと坪井コーチに言われていた」と事情を明かした。殊勲打に関しては「たまたま」と謙遜したが、「ただストレート一本で待っていたわけではない」と経緯の説明を始めた。短い時間の中での駆け引きを振り返った。

「打席に入る前に打てと言われていたが、ジョンソンが牽制をしたら、バントの構えをするように言われていた。それから打席の後ろに立つと、バントはないということが相手にバレてしまうので、普段バントをする時のように前のあたりに立った。けん制はなかったが、初球にストレートが来たので、これしかないと思って振った」

投げては6回途中2失点で5勝目、広島戦で3勝「中継ぎの人たちのおかげ。頭が上がらないです」

打球は右中間の真ん中を抜ける二塁打となり、2者が返って勝ち越しに成功した。野手さながらの見事な当たりだったが、井納は「普段はバント練習はやっているけど、どうせ打てないと思っているので、打撃練習は全くやっていない」と、質問した記者を笑わせた。

広島からは今季3勝目とキラーぶりを発揮した井納だが、本業のピッチングに関しては「なんとか粘ることができたが、6回を投げきれず情けない気持ち」とイニング途中の降板を悔やんだ。一打同点、逆転のピンチをしのいだパットンをはじめ、リリーフの4投手が無失点に抑えて5勝目を手中にした右腕は「中継ぎの人たちのおかげ。勝利につながったし、頭が上がらないです」と殊勝に話した。

ともにお立ち台に立ったパットンの「点を取られなかったので、美味しい焼肉をごちそうしてくれると思います」という言葉に、「外食がOKになったら是非、行きましょう」と現状にも即した気配りのコメントを発した井納。独特の言動でファンから「宇宙人」の愛称もあるチーム日本人投手最年長の右腕の活躍で、DeNAは貯金ゼロの危機をまたも回避した。(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

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