コロナ影響、44年で閉店 横須賀のサウナ「トーホー」

9月10日の営業を最後に閉店するサウナトーホーの前に立つ横須賀建物代表取締役の織茂明彦さん(左)と織茂さんの次女で従業員の岡野瑛子さん(右)=横須賀市米が浜通1丁目

 横須賀のサウナ施設「サウナトーホー」(横須賀市米が浜通1丁目)が9月10日の営業を最後に、44年の歴史に幕を下ろす。開業以来、地元で愛されて周辺の歓楽街のにぎわいとともに繁盛したが、バブル期以降の街の衰退に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響で元に戻らない社会・経済活動が追い打ちを掛けた。

 「息抜きできる貴重な場所だった。かなりショック」。サウナ好きで、以前から通っているという横須賀市在住の50代の男性会社員は、閉店を惜しんだ。

 そんな声に、トーホーを運営する横須賀建物の代表取締役織茂明彦さん(67)は「もちろんめちゃくちゃ寂しい」と明かすが、「じわじわと客が減って閉店するのと違って、予想もしなかったコロナの影響なので素直に諦めがついた」というのが正直な心情だという。

 トーホーは、カプセルホテルを併設する男性専用のサウナ施設。サウナはフィンランド発祥の「ロウリュ」と呼ばれる方式で、サウナストーンに水を掛けて蒸発させる熱い水蒸気が発汗を促す。

 オープンしたのは織茂さんが入社した1976年。「お前がやるんだ」。飲食店などを運営する同社社長だった父親から突然告げられた織茂さんは、入社半年もたたないうちに、実質的に店を任されることになった。

 バブル期には周辺に数多くの飲み屋が立ち並び、すでにお酒を飲んだ客や飲む前にサウナに入ろうという客でにぎわった。横須賀という土地柄もあり、自衛隊関係者が多かったという。

 バブル期以降はかつての歓楽街は衰退して飲み屋は減少したものの、近年は漫画やドラマにもなった『サ道』の影響で、愛好家を「サウナー」と呼ぶブームも起こった。熱いサウナ室と水風呂に繰り返し入ることで得られる気持ち良さを「ととのう」と表現するサウナーらが集い、ブームに支えられていた面もあった。しかし、新型コロナの脅威に逆らうことはできなかった。

 「サウナはどうしても必要なものではない。体を洗ってさっぱりするだけなら家でもできる。『マスクをしないでいいような生活には戻れない』などと言われるが、本当にそうだとしたら(サウナは)無理だ」。自粛期間が明けても社会活動や経済活動が元に戻らないという現実を突き付けられた織茂さんは、8月に入って閉店を決めた。

 トーホーの閉店で、同社には貸しビル業だけが残る。織茂さんは「三浦半島で駅から歩いて行けるサウナがなくなってしまい申し訳なく思う。残念、寂しい、と言って下さる方に最後まで満足していただけるサウナを提供したい」と残り少ない営業に思いを込める。

 9月11日午前9時にカプセルホテル宿泊客のチェックアウト後、閉店する。問い合わせは電話046(824)4126。

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