WECを戦うロペスがGRスープラでDTMトロフィー初参戦「GT4を通じ、さらに魅力を知ってほしい」

 TOYOTA GAZOO Racingに所属しWEC世界耐久選手権/ル・マン24時間レースで、マイク・コンウェイ、小林可夢偉とともに7号車トヨタTS050ハイブリッドをドライブするホセ-マリア・ロペス。普段はビッグパワーのLMP1カーをドライブする彼が8月22~23日、DTMドイツ・ツーリングカー選手権のサポートレースであるDTMトロフィーの第2戦ラウジッツリンク戦に初参戦した。

 GT4カーを用いたスプリントレースとしてレースウイークの土日に各1レースが開催されるDTMトロフィーは、DTMと同様にハンコックがワンメイクタイヤを供給するレースだ。GT4ヨーロピアン・シリーズやドイツのADAC GT4のようにブロンズに限定したドライバーカテゴライズは行われていないのが特徴で、このためプラチナドライバーであるロペスのレース参加が実現している。
 
 2020年にデリバリーが開始されたGRスープラGT4の開発テストドライバーを務めるロペスが、異例とも言えるスープラを駆ってのGT4レース初参戦とあり、この挑戦には大きな注目が集まった。

 リング・レーシングの90号車GRスープラGT4に乗り込んだ元WTCC世界ツーリングカー選手権チャンピオンは、雨が降りしきるなかで行われた第1レースを9番手ポジションからスタートする。
 
 その後、ロペスは順調にペースを上げて上位に食い込むもレース終了間際、1コーナーへの進入時にチームメイトのハイコ・ハンメル(GRスープラGT4)と接触。ロペス駆る90号車スープラはフロント部分が大きな破損を負い、惜しくもリタイアとなった。

雨のなかで行われた第1レース。ホセ-マリア・ロペス駆る90号車スープラは上位を走行するも、チームメイトとの接触でリタイアに。

 
 チームは翌日のレースのため車両の修復を試みるが、サーキットに持ち込まれていたパーツでは足りないことが判明する。そのため急きょ、ケルンにあるTOYOTA GAZOO Racingヨーロッパ(TGR-E、旧TMG)から部品が運ばれることとなり、当該パーツは約700㎞の距離を夜通しの移動で運び込まれた。
 
 翌日の第2レースでは、ロペスが見事にポールポジションを獲得しチームスタッフの努力に応えた。しかし、車両保管時間内にメカニックが車両に手を加えてしまったことで予選タイムが抹消され、レースは最後尾スタートに。それでもロペスは追い上げをみせ、GT4レース2戦目で8位入賞を果たしている。

 そんなラウジッツリンク戦、自身初めてのGT4レースへの参戦を終えたロペスに、DTMトロフィーやGRスープラの感想を聞いた。

フロント部分を交換して挑んだ第2レースでは、ポールポジションを奪うもタイム抹消で最後尾スタートに。
GRスープラGT4の開発テストドライバーを務めるホセ-マリア・ロペス

■GRスープラGT4のドライブに「物足りないと感じることはない」とロペス

――GRスープラGT4の開発テストドライバーを務めるあなたですが、このプロジェクトやレース参戦を終えての感想を聞かせてください。
ロペス:僕、そしてチームにとっても初めてのプロジェクトでありプレッシャーもあったが、新たなカテゴリーそして新境地とあり、いくつかのハプニングもあったけど非常にエンジョイできたレースウィークだった。

ロペス:ニュルブルクリンクの(北コース)“ノルドシュライフェ”や、スパ・フランコルシャンなどでのテストでは多くの時間でドライブしていたが、GT4スープラGT4をレースでドライブをするのは初めてだった。だが、マシンの感触はとても良く、ドライブする楽しさを実感できたよ。世界中のサーキットを走っているけど、このラウジッツリンクは初めてで来る前から楽しみにしていたんだ。

――まさかあなたがGT4レースに出るとはファンの誰もが信じられず、とても大きなサプライズとなりましたね。
ロペス:僕自身にもビッグサプライズだったね! こんな素晴らしい機会を与えてくれたトヨタにはとても感謝しているよ。

ロペス:何人かのドライバー仲間には「GT4レースに出てどうするの?」と聞かれたけれど、僕にとってはカテゴリーやマシンを超えてチャレンジできる機会はいつもウェルカムで、例えLMP1であろうがGT4であろうが、そのチャレンジ精神はいつも同じだ。そのハードでプレッシャーを感じるチャレンジのなかで、自身がエンジョイできる状況に持って行くことが大事だと思っているよ。

2020年にスタートした新カテゴリー『DTMトロフィー』の第2戦ラウジッツリンクに参戦したGRスープラGT4

――普段ドライブするLMP1とGT4では、ポテンシャルの差が非常に大きいと思いますが、そのギャップをどう受け止めていますか?
ロペス:ハハハ、いつものLMP1とGT4では比べ物にならない大きなギャップがあるけど、GRスープラGT4をドライブしてそれが物足りないと感じることはなく、その大きなギャップを逆に楽しんでいるし、GT4をドライブしていかに自分がそれに順応できるか、という点でも自分自身の課題でもあるね。

――昨年、A90スープラが世界で発売され、大きな話題となりましたね。あなたが感じるスープラとは?
ロペス:スープラは最新のA90に限らず、歴代すべてがスポーツカーのレジェンドともいえる存在だと考えている。開発テストドライバーという立場で、特にスープラのレーシングバージョンであるGT4とは向き合う時間が長く、この繊細な走り心地とパワフルなポテンシャルに走る喜びを実感しているよ。

ロペス:既にスープラというブランドは世界で確立されていて、認知度は抜群。このGT4マシンで世界中のドライバーが僕と同じようにレースを通して、さらにスープラの魅力を知って欲しいと願っているよ。

――あなたのプライベートカーもひょっとしてスープラですか?
ロペス:まだ所有はしていないんだけど、狙っているのは確かだよ。スープラをドライブする度に欲しくてたまらなくなっていて、近々手に入れたいと思っているよ。

 DTMトロフィーでは、ジェントルマンドライバーとも呼ばれるアマチュアのみならず、将来のレースキャリアを夢見る数多くの若手ドライバーが参戦しているだけに、世界トップドライバーのロペスとの競演はよい刺激になったのではないだろうか。

リング・レーシングのGRスープラGT4に乗り込むホセ-マリア・ロペス
第2レースを8位で終えたホセ-マリア・ロペスのGRスープラGT4

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