上白石萌音主演のラジオドラマ「仮想郵便局」放送。「たくさんの人に届いてほしい」

NHK-FMでは8月29日に、鹿児島県出身の上白石萌音が主演を務めるラジオドラマ「仮想郵便局」(午後10:00)を放送。制作したNHK鹿児島放送局の聴取エリアでは先んじて8月11日にオンエアされた作品を、今回は全国へ届ける。

メールやSNSが当たり前な現代だからこそ、手紙の持つ「自分の思いを伝える力」を見つめ直す企画として、視聴者から手紙にまつわるエピソードを募集し、取材中に出合ったのが、タイトルの“仮想郵便局”。鹿児島市内のある男性が始めたプロジェクトだった。手紙の末尾に都道府県名と年齢、ペンネームを記し、切手を貼った自分宛の返信用定形封筒を同封して“仮想郵便局”まで郵送すると、局に届いた別の誰かの手紙が送られてくるという仕組みだ。「心が弱っている人たちの気持ちを包んだり、背中を押したりできれば」という思いから始まった。コロナ禍で人々が感じている“孤独”や、ステイホームで派生した“自分の気持ちと向き合う時間”と相まって、鹿児島を中心に広がりを見せている。

そして、鹿児島で“手紙”といえば、知覧の特攻隊だ。隊員が家族へ宛てた手紙は、多くの人の心を打ち、平和の尊さを現代まで伝えている。そんな75年前と現代の手紙にまつわる悲哀をラジオドラマとしてつないだのが、劇作家であり演出家の詩森ろば氏。社会派作品で高い評価を得ている彼女が脚本を担当する。

前園ことり(上白石)は、長年の夢だった地元ラジオ局に就職し、人気番組「仮装郵便局」のパーソナリティーを担当することに。念願の仕事のはずなのに、全くうまくいかず落ち込むことりに、ある日、1通の手紙が手渡される。それは「終戦直前に特攻隊員として飛び立ち、戻ってこなかった恋人に宛てた女性の手紙」だった…。出演は上白石のほか、北村有起哉、富田靖子、柄本時生ら実力派俳優が名を連ねる。

番組終盤には上白石による5分を超えるノンストップの独白シーンが用意されており、ラジオドラマならではの演出は必聴だ。番組担当ディレクターは「今までにない戦争を扱う番組として、自分の気持ちと向き合う時間としてお楽しみください」とコメントした。

■上白石萌音(前園ことり役) コメント
「地元・鹿児島が舞台の作品に出られることがすごくうれしいですし、戦後75年という大切な年に、みんなで考えられるような作品になっていますので、ぜひたくさんの人に届いてほしいなと思います。故郷への愛や、恋人への愛、家族への愛、職場の中での相手を思いやる気持ち、他人の言葉を思いやる愛…。いろんな愛でできた、とても優しくて温かい、考えさせられる作品です。ぜひお聴きください!」

■北村有起哉(橋口雄介役) コメント
「終戦75年目ということで、こんなことがあったんだなぁっていう題材で、僕自身知らなかったので正直つらい気持ちになってしまって。ちゃんと立て直して朗読しないと流されちゃうくらい、感情があふれてしまいました。でもこれを体現できる機会をいただいたことが、僕にとって本当にありがたいことだなと思います。こういった作品にこれからも出合っていきたいと思っています。どうぞお楽しみに!」

■富田靖子(水野カヨ役) コメント
「今回カヨという女性…というより、カヨさんという“思い”を伝えられたらと思っています。あの時自分は体験もしていないけれど、いろんな方がいろんな思いをして、いろんな言葉を飲み込んで…そんないろんなことを、この台本を読んで、演じてみて、萌音ちゃんの声を聴いて、忘れちゃいけないなって思いました。『仮想郵便局』、皆さんぜひぜひぜひ聴いてください!」

■柄本時生(森一馬役) コメント
「戦争に向かう方の役をさせていただいたのですが、感覚が今の現代とはちょっと違うんじゃないのかなと思っています。そこを聴いていただけたらうれしいです。本当に優しいお話なので、なんだか…泣けると思います。皆さんぜひ聴いていただけるとうれしいです。よろしくお願いいたします」

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