「サッカーじゃなくてスミマセン。」卓球・T.T彩たまがあえて“自虐”で勝負したワケ

写真:T.T彩たまの「サッカーじゃなくてスミマセン。」ポスター/撮影:ラリーズ編集部

卓球Tリーグ男子・T.T彩たまは28日、埼玉高速鉄道株式会社とエリアパートナー契約を締結した。

取り組みとして、埼玉高速鉄道沿線の駅構内や電車の中吊り広告にT.T彩たまポスターが掲示される。その1つに「サッカーじゃなくてスミマセン。」と綴られ、坂本竜介監督と神巧也主将が頭を下げるユニークなポスターが作成されている。

考案者であるT.T彩たま坂本監督が、“自虐ポスター”の真意を語ってくれた。

「知ってもらってなんぼ」卓球界の課題

2018年10月にTリーグが開幕し2シーズンが経過した今、坂本監督はある課題を感じたと振り返る。

「いくら卓球を面白いと言っても、2シーズン通してTリーグ自体周知できていないと感じた。来てもらえれば面白いと思ってもらえるが、もっと知ってもらう活動が必要。知ってもらってなんぼですよ」。

写真:T.T彩たまの坂本竜介監督/撮影:ラリーズ編集部

卓球ファンの中ではTリーグという存在は根付いてきたが、野球やサッカー、バスケなどと比較すればまだまだ浸透していない。T.T彩たま株式会社の執行役員も務める坂本監督は、経営面からも認知度向上が必要だと分析する。

スポーツ経営で重視しないといけないのは広報と営業。広報でどれだけ周知活動できるかが大事で、だから最近は動画も頻繁にあげるようにしている。結局広報が上手くいかないと営業も上手くいかないんですよ。知らない人が来るのと、『あのT.T彩たまさんね』となるのとでは全然違う」。

写真:「サッカーじゃなくてスミマセン。」ポスターの前に座る神巧也T.T彩たま)/撮影:ラリーズ編集部

一般認知度向上の面では今回の埼玉高速鉄道とのエリアパートナー契約は大きなものとなる。卓球ファンに限らず、学生から社会人まで誰しもが利用する電車内や駅でT.T彩たまの存在をアピールすることができるからだ。

写真:坂本竜介監督(T.T彩たま)/撮影:ラリーズ編集部

坂本監督も「ターゲットをあえて絞らないで多くに知ってもらうところを求めていく中で、埼玉高速鉄道さんとお話させていただいたところ、ぜひということで話が進んだ」とパートナー契約の背景を明かしている。

浦和レッズじゃない方の球団です

T.T彩たまは、埼玉高速鉄道の浦和美園駅を最寄駅とした練習拠点「T.T彩たま卓球ステーション浦和美園店」を2020年3月にオープンしている。だが「浦和美園に卓球チームあり」というテイストではなく、あえて「サッカーじゃなくてスミマセン。」と自虐風にしたのには理由がある。

浦和美園駅は、Jリーグの人気チーム・浦和レッズの本拠地埼玉スタジアムの最寄り駅でもあり、すでにサッカーの街として認知されているからだ。

写真:サッカーの駅とあって、窓にはキャプテン翼の装飾がされている/撮影:ラリーズ編集部

「このエリアですでに根付いているカッコいいサッカーに、卓球がカッコいいと直球勝負しても人々の目につかないだろうと思った。卓球一本で選手からやってきた自分は、卓球をカッコよく見せたい。だけどそんなことを言ってられない。あえて卓球を自虐して勝負した」。坂本監督は、サッカー人気を逆手に取り、ついつい足を止めたくなる、写真を撮ってSNSにあげたくなるようなユニークなポスターを目指したという。

検索に誘導する戦略も

また、このポスターには、戦略的な仕掛けが施されている。

「『じゃない方のプロ球団T.T彩たまです』とあえて狙ってやった。T.T彩たまって何のチームなんだろう?と検索してもらうためにあえて卓球を出さないようにしている」。ポスターを見た人が引っかかる部分を演出し、アナログ広告ながらもウェブへと誘導するというからくりだ。

写真:『じゃない方のプロ球団T.T彩たまです。』/撮影:ラリーズ編集部

「知ってもらうという部分をアグレッシブに攻めて、今回は勝負に出ました。もちろんもう1枚はちゃんとカッコいいのを作ってますよ(笑)」。坂本監督は試合だけでなく経営面でも采配を振るい、T.T彩たまの認知度アップ、そして地域に密着したプロ卓球チームを目指す。

文:ラリーズ編集部

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