辞任表明

 ずいぶんお世話になっていた。試しに数えてみたら「安倍」という単語の出てくる原稿を筆者だけでこの欄に104本書いている。最初は2012年の11月、野党の党首として臨んだ党首討論で、当時の野田佳彦首相に衆院の解散を確約させた一幕▲その衆院選で圧勝し、選挙後の12月に首相に返り咲いてから7年8カ月に及んだ超長期政権に幕が下りる。安倍晋三首相が辞任を表明した▲「前の政権のように突然辞任して迷惑を掛けられない」と説明した。お言葉を返すようだが、これでも十分に突然だ。〈…職務継続の意欲を表明するとみられる〉との各紙の見立ては総崩れになった▲病を理由に去る人に「投げ出し」の言葉は酷に過ぎるのだろう。だが、やはり既視感は否めない。コロナ対策迷走の責任をとるでも、支持率の低迷を受け止めるでもない“自己都合”の退任劇▲昨日の会見では「志半ば」の退場に目を赤くしていた。それでも簡単に割り引くわけにはいかない。1強の勢いに任せ、数に任せた強引な政治手法、しばしば繰り返された世論との深刻な衝突、一度として形で示されることがなかった「責任」や「反省」▲しばらくは記録更新が続く連続在任は今日で2804日。後世の教科書はこの長さをどう説明し、この政権をどう記すのだろう。(智)

 


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