中日ドラ4郡司にある“名捕手”になれる素質 専門家が語る「古田のような捕手に…」

中日・郡司裕也【写真:小西亮】

セ・リーグで古田、谷繁らを苦しめた巨人の名スコアラー・三井康浩氏が分析

■中日 5-3 巨人(28日・東京ドーム)

中日は28日に東京ドームで行われた巨人戦で、3点ビハインドからの逆転勝利を飾った。負ければ自力Vが消滅する可能性があったが、中盤以降に打線と投手陣が奮起する粘りの勝利だった。巨人で長くスコアラーとしてセ・リーグ球団を分析していた三井康浩氏は9回を通じて捕手の郡司のリードを称賛。「もしかしたら、古田のような捕手に…」と期待を抱かせるような要素があったという。

試合展開は4回に2点、5回に1点を失う苦しい展開。郡司も先発・松葉を必死にリードした。3点を失ったが、三井氏は巨人の打線がうまかったとリードに問題はなかったという。チャンスメークした松原、適時打を放った岡本、丸、中島について「打つのが上手かった」と打者を褒め、投手の制球力不足を指摘した。

「郡司くんは両サイドを使うのが上手な捕手ですね。打撃はまだ大学時代(慶大)の片鱗が見られないですが、彼がこのまま育てば面白いリードをする捕手になると思います」

三井氏は巨人のスコアラー時代、ヤクルト・古田、中日・谷繁らセ界を代表する捕手たちと駆け引きをしてきた。自軍の仁志、清水、松井、清原、高橋由、阿部、二岡らにデータを与え、最強打線を支えていた時期もある。そんな分析のプロが「リードでいろんなことができる。バッティングが良くなれば、という条件は付きますが、古田や谷繁のような捕手になれるかもしれませんね」と絶賛したのは両サイドの使い方と視点だった。

両サイドを使ったリードを紐解くと、例えば、先発した左の松葉だったら、右打者に対して、外から緩い変化球で入り、次に内角へ鋭く真っすぐを投げる。その後は中を意識させて、外に行くのか、中を続けるのか、打者の顔色を見ながら決めることができているという。

「3回の坂本を併殺にとっているあたりもそうですね。勝負を早めに仕掛けてゴロを打たせている。走者を出したけど、次でしっかりダブルプレーをとる配球をしていました」。

好調のウィーラーもその内、外の駆け引きで全くタイミングが合わず、揺さぶりでやられていた。的を絞らせないリードだった。

極めつけは2点をリードした8回だ。5番手の福が乱調で、安打や死球などで1死満塁の大ピンチ。そこで巨人の代打・岸田を迎えたが、見事に二併殺に仕留めて、無失点で切り抜けた。ここで勝負あった。そこにも捕手・郡司の計算が見え隠れしていた。

「岸田に内側を見せていました。緩急でも見せて、最後、外で仕留めるという狙い通りの配球。併殺を取る前に追い込み、膝もとの変化球でファウルを打たせていた。あれが大きかったですね」

郡司が「バッターを見ていた」証は8回1死満塁の併殺にあった

その膝もとの球が布石となった。打者心理としてはその状況で追い込まれたら「アウトコースに対応するために良いバッターならおっつける意識になる」という。

「そこを利用していました。バッテリーは空振り三振を取りに行くならばアウトハイの直球。逆に当てて打たせるなら、アウトローの真っすぐです。少し高さは甘かったですが、アウトコースの低めにいったことで狙い通り、併殺になりました。郡司くんがバッターを見ている証です」

郡司が内角を続けたことで、岸田の頭には強く意識が残った。そうすると打者は外へなかなか踏み込んで打つことが難しい。そのため、ポイントが捕手側になる。そこで、ストレートが来ると内角、そして“おっつける”意識が邪魔をして対応に遅れてしまう。岸田に対しては福がしっかりと投げきれていたため、ピンチを脱することができたのだ。

打率が低迷しているため、課題はそこにもあるが、捕手としてさらに磨きをかけるとするとどんなところだろうか。

「あとは落ちるボールや奥行をもうすこし使えればと感じます。落としたり、抜いたりするともっとリードの幅は広がります。本当に打者をよく見ている。繰り返しになりますが、大学の時のような打撃ができれば、古田のような捕手になる要素はあります。今日の打撃を見ると、リードでいっぱいいっぱい、打席は頭が働いていないように見えました。阪神の矢野監督、谷繁のような名捕手になってほしいですね」

打撃だけでなく、まだまだ守備面や、盗塁阻止など課題は多く残るルーキー捕手だが、球界を代表する系譜を辿れる素材であることは間違いなさそうだ。(Full-Count編集部)

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