長崎大次期学長に再選 河野氏・インタビュー 研究力強化を図る

長崎大学長に再選された河野茂さん

 〈長崎大の次期学長に再選され、10月1日から3年間、再びかじ取り役を担う。大学の課題や2期目の抱負を聞いた〉

 -1期目を振り返って。
 情報データ科学部を公約通り4月に開設できた。運が良かった。文部科学省に「教員の確保に苦労する」と言われたが、(学部長に就いた)西井龍映教授の人脈で全国から優秀な人材を集められた。ただ、中国やインドから来る予定だった教員や学生は、新型コロナウイルス問題の影響で来られなくなった。
 反省点は大学の運営交付金が削られる中、教員は常勤が減り非常勤が増え、研究実績が上がらなかったことだ。
 コロナの影響で授業を全てオンラインに切り替えたが、学生はサークル活動も友人もできず、直接教員から学べないと不満が出た。一方、一部で対面授業を始めると、不安の声が出て、難しさを感じている。ウィズコロナの時代、リスクと教育のベネフィット(利益)のバランスをどうするか。対面授業をやるための条件を議論し、細かく決めたい。

 -2期目の抱負は。
 長崎大は1月、プラネタリーヘルス(地球の健康)に貢献すると宣言した。人の病気、環境、宗教、核、教育格差などさまざまな問題がある。コロナが起こったのも地球の健康が害されたから。全学部がこれに向かって特徴を出してほしい。
 研究力強化に向けては種まきをしっかりしていく。教員は研究、教育、社会貢献の三つの仕事があるが、研究を重視したポジションをつくり、研究に秀でた人を評価して採用したい。
 ITを駆使した教育も必要だ。10学部あるが、情報データ科学部は全ての学部の基本になる。オンラインと対面のブレンド教育を意識してやらないといけない。
 人事、財務のマネジメント改革にも取り組む。常勤の教員が減ったあおりで40代以下の若手が減った。新陳代謝を促すために、若手をどう増やしていくか。計画的に入れていかないと、全ての学部で教員の高齢化が進む。教員の機能分担、特性をもっと発揮できる人事評価を進めたい。

 -新規事業は。
 留学生も日本人学生も入る国際寮を文教キャンパスにつくりたい。PFI(民間資金活用による社会資本整備)を考えている。300戸程度で、2022年度に1期目を完成させたい。

 -坂本キャンパスに建設中の感染症研究施設「バイオセーフティーレベル(BSL)4」の必要性は。
 人の脅威になる感染症を研究できる体制は国策として必要。住民の100%の理解を得られないのは仕方ないが、コロナの時代には多くの方の理解を得られるのではないか。事故が起こらないという保証は誰もできない。油断することなく不断の努力を続けていく。

 

 【略歴】こうの・しげる 東彼波佐見町出身。長崎大医学部卒。同大大学院医学研究科修了。医学部教授、医学部長、大学病院長を経て2017年10月から現職。専門は呼吸器感染症。趣味は書道とゴルフ。好きな言葉は「如己博愛」。自身を一言で表現すると「迅速果敢」。

 


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