いながきの駄菓子屋探訪(9)宮城県柴田郡村田町「つり具のヤマダ」

全国約250軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は宮城県柴田郡村田町の「つり具のヤマダ」です。

仙台市から25キロのコンパクトな街・村田町

仙台市はさすが大きな街で、元気な問屋さんも複数あり駄菓子屋も多く残っていて、探訪も順調そのもの。夕食後に銭湯へ行き(仙台は昔ながらの銭湯も多く残っているので選び放題です)、上がって座敷でくつろぎながらスマホで駄菓子屋を調べていたところ、更新日の古いブログに行き当たりました。

そのお店は、ブログには「村田町にある駄菓子屋」として書かれているものの、外観も店名も完全に釣具屋。更新日がだいぶ前なので現在も開いているか微妙だったんですが、気になりすぎて翌日訪ねてみることにしました。

村田町は仙台市街から南西に25キロほど行ったところにあり、高速道路のインターチェンジや道の駅、町役場から学校、商店といった暮らしに基づく主要な機能が狭い範囲に凝縮されたコンパクトな街でした。釣具屋さんは街の北側で営業しており、「駄菓子」というノボリが立っていたので、いろんな意味でひと安心です。

左半分が駄菓子、右半分が釣具売り場

「つり具のヤマダ」の店内に入ると、左半分が駄菓子、右半分が釣具売り場という造りになっていました。駄菓子屋の部分は小上がりの座敷の土間側部分を棚にし、内側に店主が座るという合理的で雰囲気の良い構造になっています。平日の昼間に子連れで、話し言葉も違うからか、「あら?どこからきたの?」と話しかけられました。それをきっかけに話は弾みに弾んで、なんと2時間超!ついには朝食までいただいてしまいました(笑)。

戦前から続く駄菓子屋

つり具のヤマダは、店主ご夫妻のご主人のお父さんが戦前から営んでいた、菓子やおもちゃの卸売業兼小売店から始まったとのこと。先代の頃は丸メンコを自分で作って販売したりと、製造業のようなこともしていたそうです。引き継いだあとに店舗の半分を釣具屋にしたそうなのですが、これはご主人の趣味から始まったとのことです。

「これから駄菓子屋を始める?全国の駄菓子屋を訪ねて回ってる??うわーそんな酔狂な人がいるんだねえ(笑)。駄菓子屋で食っていくのは本当に大変だよ。うちは元々卸から始まってるから、安く仕入れられるんで、なんとかなってる。普通にやったら駄菓子だけじゃとても無理だよ。こっちのほうは子どもの数も昔の10分の1くらいに減っちゃった。本気でやるなら、いろんなこと考えなくちゃいけないよ」

話し込む中で、親の代から続く経験と、これからの時代の見通しを絡め、駄菓子屋が生き残っていくにはどうしたら良いかということを学ばせてくれました。長居させてもらっている間も、近所の人や釣り人が絶え間なく来店しては店主ご夫妻と談笑していき、この土地の言葉が飛び交います。柔和な表情で優しい奥さんと、見るからに商人(あきんど)という感じの、キリっとした顔をされているご主人。同じ話題でもご夫婦で切り口が違うからか、誰もが話が膨らんで尽きない様子でした。

つり具のヤマダ

住所:宮城県柴田郡村田町大字村田末広町23

電話:0224-83-2228

営業時間:7:30~18:30

定休日:不定休

[All photos by Atsushi Miyanaga]

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