鷹ムーア、初勝利を支えた2人“女房”の存在「ワイフは偉大」「リードを信じた」

ソフトバンクのマット・ムーア【写真:藤浦一都】

球数制限を超えたベンチの続投判断に「本当に感謝」

■ソフトバンク 3-0 日本ハム(29日・PayPayドーム)

ソフトバンクの助っ人左腕マット・ムーア投手が、29日の日本ハム戦に先発。故障明けで球数制限がある中での登板となったが5回無失点の好投を見せ来日初勝利を挙げた。この日は「タカガール デー」と連動したピンクリボン運動支援としてピンクリボンユニフォームを着用。記念のユニフォームは愛妻への最高のプレゼントとなりそうだ。

7月7日の練習中に左ふくらはぎ筋挫傷を負ったムーアは、翌日に登録抹消。1か月半のリハビリを経て、ようやく実戦に復帰した。故障明けということもあり、この日は90球という球数制限を言い渡されての登板となった。

立ち上がりに不運な内野安打からピンチを背負うが無失点で切り抜けると、2回以降も走者を出しながら粘りのピッチングを展開した。1点リードで迎えた5回2死一、三塁となったところで球数は89球。

森山良二投手コーチがマウンドに行って降板を促したが、ムーアは「もう1人行かせて欲しい」と直訴。森山コーチがベンチに向かって人差し指を立てながら工藤公康監督への伺いを立てた。指揮官は「あそこで抑えるかどうかで勝ちの権利も出るから」と頭上で大きな丸を作ってOKサイン。ムーアは西川遥輝を渾身の力で空振り三振に斬ったが、試合後は「あそこで行かせてくれたことに本当に感謝している」とベンチの決断に頭を下げた。

「接戦の中で自分でも粘っていけた。チームはいい流れで来ているので、いい意味でチームに貢献できたと思う」とムーア。記念のウイニングボールは「アメリカ時代の記念のボールのコレクションに加えるよ」と声を弾ませた。

「リードを信じて投げた」ともう1人の“女房”にも感謝

この日は「タカガール デー」という女性ファンのためのイベント試合。連動して行われたピンクリボン運動支援で選手はピンチリボンユニフォームで戦った。それがムーアにとって記念の初勝利ユニフォームとなった。

「何着かもらっているけど、自分でキープできるものがあれば奥さんにあげたいね」とムーア。ピンクリボンユニフォームは選手がサインを入れてピンクリボン運動用のチャリティーオークションに使われることになっているが、それとは別に愛妻に贈る予備があることを願いたい。

「今年はこういう(コロナの)状況で、しかも自分がケガをしてしまい、奥さんと息子が一緒にいてくれなければここまで来れたかどうかわからない。ワイフは奥さんとしても、母親としても偉大な存在だよ。これからも家族3人で福岡の街を楽しみながら生活していきたい」と、改めて家族の存在に感謝の言葉を述べた。

ムーアは「復帰初戦で勝ちがついたことも、今日のピッチングの内容も、自分にとって良い一歩になった。次はまた球数を増やせるようにやってきたい」と語る。その“良いピッチング内容”を支えたのが、「高校時代に覚えて、アメリカのマイナー時代にコーチに言われてたくさん投げるようになった」というチェンジアップだった。

「普段であればカットボールが多いのが自分のスタイル。日本に来て最初の西武戦では自分で考えながら投げていたけど、次の日本ハム戦からは甲斐(拓也)のリードを信じて投げるようになった。自分は来日1年目だし、甲斐の方が日本のバッターのことを知っているからね。今日も甲斐のリードを信じて、彼のミットをめがけて投げるだけだったし、それがうまくいったと思う」

慣れない日本での私生活を支えてくれる愛妻と、日本でのプレーを支えてくれる女房役。ようやく故障から復帰したムーアにとって、2人の“ワイフ”の存在が何よりの力になることだろう。(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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