レガシーは?

 日頃は使わない横文字が、いま報道で飛び交っている。辞任を表明したその人の「レガシー」は何だろう、と。政治的遺産、後世に伝わる優れた業績をいう▲再登板した安倍晋三首相は、7年前の参院選で野党を圧した。このとき掲げたのが経済政策アベノミクスで、何かが変わりそうだと期待を膨らませた方も多かったろう▲再び政権を握ったあと、5回の国政選挙で必ず勝っている。長い長い「安倍1強」は「選挙の強さ」あってこそ、築かれたに違いない▲6年前は、アベノミクスを続けることの是非を問う-と突然言い出して衆院選を仕掛けた。3年前もいきなり衆院解散し、大義がよくのみ込めない“謎の選挙”で圧勝した▲野党が準備を整える前に、勝てるタイミングで選挙を打つ。勝機をものにする名手は、7年8カ月の最長政権を担った。これを「政治を長く安定させた」と取れば、長期政権そのものがレガシーかもしれない。長かったから緩み、おごりが生じたのならば「負の遺産」かもしれない▲レガシーは「金字塔」ともいえるだろう。「金」の字の形をした塔を金字塔といい、金色の塔でも、金製の塔でもないらしい。語意の通り、首相の残した何かをレガシーと呼ぶとしても、光り輝くようにはどうも思えずにいる。後世から見ればどうだろう。(徹)

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