インディカー第8戦ゲートウェイ詳報:琢磨の猛チャージ届かず、ディクソンが今季4勝目

 セントルイス近郊にあるワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイ・アット・ゲートウェイで開催されているNTTインディカー・シリーズ。29日に行われた第8戦決勝レースは、3番手からスタートしたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)が勝利し、今季4勝目を挙げた。

 スコット・ディクソンは、イリノイ州マディソンのワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイ・アット・ゲイトウェイ(全長1.25マイル)でのシリーズ第8戦で自身6回目のタイトルに近づく今季4勝目を挙げた。

 最後のピットストップの速さによってパトリシオ・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)の前に出た彼は、その後に2番手に浮上してきた佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)の追撃を振り切った。

パワーを先頭にレースがスタート

 先週のインディ500のリベンジとまでは行かないが、少しは悔しさを晴らすことができただろう。

 琢磨にとっては本当に悔しい2位となった。インディ500とは違って、ゲートウェイでの琢磨は中盤戦までは思い通りの走りができていなかった。

 しかし、終盤戦ではトップレベルの速さを手に入れていた。燃費良く走って最終ひとつ前のスティントを長くする作戦も大正解だったうえ、そのスティント終盤のスピードが驚異的だったことから、琢磨はリードをどんどん広げていった。

 そして、最後のピットストップへと向かった琢磨。作業を終えたらトップでコースに戻れるはずだった。タイヤ・ライフを考えて早めのピットを行なったライヴァルたちがトラフィックで苦しむ中、琢磨はクリーン・エアを浴び、スティント後半に目覚ましい速さのラップを連続して刻み、2連勝へと大きく前進したのだ。

 ところが、最後のピットで大きなタイムロスがあった。右リヤホイール担当が、外すのにも装着するのにも時間をかけてしまった。

 琢磨がコースに戻ると、ディクソン、オーワードの後ろの3番手に順位は下がってしまっていた。どんどん競争が激しくなっているインディカーでは、このような小さなミスが勝敗を分ける。ドライバーたちだけでなく、クルーたちの両肩にも大きなプレッシャーがのしかかっている。

ピット作業を行う佐藤琢磨と30号車のクルー

 琢磨は諦めず、最終スティントで猛チャージを見せた。

 残り21周のターン1でオーワードをパス。アウトから並びかけた琢磨の迫力が凄まじく、並びかけられる寸前にオーワードはインに避け、そこでバランスを崩した。あわやクラッシュというシーンでもあった。

 オーワードはそこから琢磨と同ペースでは走れず、3位でフィニッシュした。優勝争いをしていただけに悔しい結果だろうが、素晴らしい結果だとも言える。

 琢磨は2位で満足しなかった。2秒近い差がトップをいくディクソンとの間にはあったが、追撃を開始。ふたりの差はどんどん縮まっていった。インディ500と同様、最終スティント最速は琢磨だったのだ。

 しかし、オーワードを抜くまでに時間とタイヤを使った琢磨に対し、単独走行で逃げていたディクソンはタイヤへの負担を極力減らし、最後の勝負に備えていた。

 琢磨らしい、ファンを熱狂させる追い上げは、あと一歩及ばなかった。その差0.1404秒でディクソンが通算50勝目を挙げ、琢磨は2位となった。

「今日はパト(オワード)がずっと速く、琢磨はずっと視界に入っていなかった。しかし、最後に彼が勝負に絡んできた。50勝と聞くとうれしい。先週の悔しさがあるだけに、今日の勝利はチームのためにも良かった」とディクソンは語った。

 琢磨の連続表彰台は、AJフォイト・エンタープライゼス初年度の2013年以来。ロング・ビーチで優勝し、その次のサンパウロで2位フィニッシュした時以来だ。

 琢磨のランキングは6番手から4番手にアップ。トップのディクソンとの差は138点があるが、2番手のニューガーデンとは21点の差しかない。

 悔しさを飲み込み、「これもレースですから、仕方がない」と琢磨は語った。

 狙い通りのレースを戦い、2連勝目前まで行きながら、それを逃した。明日、ポールポジションからスタートするレースでの活躍を期待したい。

「序盤が今日はよくなかったので、その対策をしたい。しかし、今日のスピードを失いたくないので、どうするか……」と琢磨は話していた。

 予選はシボレーの1-2だったゲートウェイでのレース1だが、決勝はホンダの1-2となった。シボレーのトップはルーキーのオーワードで、次が9位のトニー・カナーン(AJ・フォイト・エンタープライゼス)。10位がコナー・デイリー(カーリン)。チーム・ペンスキーは昨年度チャンピオンのジョセフ・ニューガーデンによる12位がベストだった。

 シリーズトップの強豪にとっては、先週のインディ以上に厳しいレースとなっていた。ポールスタートだったウィル・パワーはレースペースが遅く、燃費でも不利にあり、最終的に2ラップの17位。シモン・パジェノーは最初のスタートでルーキーのオリヴァー・アスキュー(アロウ・マクラーレンSP)に追突されてスピンし、マシンにダメージを負ってスピードが上がらず、67周でリタイアを喫した。

レースをリードするパトリシオ・オワード
50勝目を喜ぶディクソンとオーナーのチップ・ガナッシ

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