一人で生きていくとマンションも購入、彼のやさしさを知って結婚に気持ちが傾いた35歳女性

日頃からベタベタするのがやさしさではありません。適度な距離感をもってつきあってきた人が、本当に困ったときに見せてくれたやさしさに、心をぐっと掴まれた女性がいます。


結婚など考えたこともなく……

アリサさん(35歳)は、幼いころに両親が離婚、いずれも再婚してしまったため、母方の祖父母に育てられました。

「祖父母はかわいがってくれたけど、両親に捨てられたという思いを払拭できないまま育ちました。離婚してふたりとも再婚、私をいらないと祖父母に預けたわけですから。中学のときに祖父が、高校のときに祖母が亡くなってひとりぼっちになったんです」

両親からはいくばくかのお金が毎月来ていたようで、祖父母はそのお金を彼女のためにきちんと預金していてくれました。

「母の兄、私にとって伯父がその後の相談相手でした。でも伯父は自分が生活に困っていたんでしょう、祖父母の家を売れとか貯金はないのかとか妙にしつこく聞いてくる。酔ってやってきて押し倒れそうになったこともあって、すごくイヤでした。それで当時、とても信頼していた高校の先生に相談したんです。先生がとても親身になってくれ、卒業後も助けてくれました」

マンションを購入して

その結果、彼女はある専門学校に進学、卒業して成人になり、就職してから祖父母の家を売って自宅マンションを購入しました。資格を生かした仕事をしながら、彼女は「絶対に結婚はしない、ひとりで生きていく」と決めたそうです。マンション購入はその決意の表れでもありました。

「ずっとひとりで生きていくことを考えていたので、特に遊びもせず、大きなお金も使わず地道に生きてきました。仕事を拡充するためにも、もっと幅広い知識を得たくて通信制の大学に入学、6年かかって卒業したのが32歳になるころでした」

恋人がいる時期もあったものの、恋に溺れることはなかったといいます。そんな彼女が大学卒業間近のスクーリングで知り合ったのが2歳年下の彼でした。
「私、たぶん相当男嫌いだったんだと思います。でも彼とは知り合ったときから、わりと素直に話すことができました。彼が外見もあまり男っぽくなかったからかもしれない」

身長もアリサさんより少し高いだけだったから、彼女がヒールを履くと同じくらいでした。穏やかな表情だったので威圧感もなく、すぐに友だちになれたと彼女は言います。

彼の心からのやさしさに触れて

彼とは自然とつきあうようになりました。つきあってほしいと言われた記憶はないそうですが、「気づいたら彼がうちにいたり、私が彼のところにいたり」したそうです。

「彼といるととにかくリラックスできました。彼もいつも気持ちがゆったりするって言ってくれて。ただ、私は自分の過去をなかなか彼に話せなかった」

彼は両親が離婚していて母親とふたりきりで育ったという話をしてくれました。そのとき彼女は「私も同じようなもの」と言ってはみたものの、それ以上話せなかった自分が、少し寂しかったそうです。

「彼のことは信頼しているつもりだったけど、やはりすべてを話すことはできなかった。私自身がそういう性格なんだろうとそのときは思いました」

それでも彼とは気が合って、つきあいを続けていきました。いつも一緒にいるわけではなく、お互いに仕事が忙しいと1ヶ月くらい会えないこともあります。会いたくても無理はしませんでした。

「昨年春、彼にプロポーズされたんです。でもそのときは『私、結婚するつもりない。たぶん結婚には向かない』と言いました。彼はめげずに夏にも秋にも、結婚しよう、ずっと一緒にいたいんだと言ってくれて。それでも私は気が進まない。自分が家庭をもってうまくやっていけるとは思えなかった」

今年の初め、ついに彼女は彼に過去をすべて打ち明けました。彼は黙って聞いてくれ、最後にはほろほろと涙をこぼしていたそうです。

「やさしい人なんだなと感動したけど、だからといって結婚しようとは思えなくて。すると彼は『アリサの好きにしていいよ。結婚したくないならしなくていい。でもつきあっていてほしい』って。ありがたかった。やっと味方ができたような気がしました」

コロナの影響が…

そしてこのコロナ禍において、アリサさんは仕事を失ってしまいます。それがもとで体調も崩しました。貯金を取り崩しながら生活、療養を続けます。不安でした。でもそれを彼には話していませんでした。

彼は仕事の合間に親身になって看病をしてくれ、よくおいしいものを作ってくれたそうです。

「ある日、彼が帰ったあとに封筒を見つけたんです。中を見ると100万円が入っていました。『無理しないで、使ってください。これは僕が勝手にあなたに貸すんです』とメモがあった。それを抱きしめて私、泣きました。そのとき貯金もけっこうなくなってきていて不安だったんです。そんなことを彼に言えない私の性格も見抜いて、彼は自分のお金を置いていった。彼だって残業代などが入らなくて困っていたはずなのに。そのときわかったんです、彼は自分のことより私を優先してくれるんだということを」

6月末になってようやく仕事が見つかり、彼女はまた忙しい日々を送っています。先日、彼に「まだ結婚したい気持ちをもってくれている?」と尋ねたら、彼はもちろんと笑ったそう。アリサさんは今、ようやく前向きに彼と一緒にいるための結婚を考え始めています。

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