鷹を8連勝に導くグラシアルの存在 工藤監督も認める“神”がもたらす効果

2号ソロを含む2安打2打点と活躍したソフトバンクのジュリスベル・グラシアル【写真:藤浦一都】

固定されつつある中村晃、柳田、グラシアル、栗原の並び

■ソフトバンク 8-5 日本ハム(30日・PayPayドーム)

ソフトバンクが30日、本拠地PayPayドームで日本ハムに8-5で逆転勝ちし、今季12球団で最長タイの8連勝を飾った。初回にいきなり4点を先制されたものの、柳田の20号2ラン、中村晃の4号2ランなどで逆転。2カード連続の3連勝で貯金は今季最多の14とした。

初回、先発の石川が日本ハム打線にいきなり4点を奪われる展開だったが、打線がものの見事に試合をひっくり返した。直後に柳田がライナーで左翼席に届かせる20号2ランを放つなど、3点を奪い1点差。再び2点差となった3回にはグラシアルの適時打と栗原の犠飛で追いついた。

4回には中村晃が4号2ランを放ってついに勝ち越しに成功。さらに5回にはグラシアルが2号ソロを放ってリードを広げた。終わってみれば、11安打で8得点。2番の中村晃、3番の柳田、そして4番のグラシアルが揃って2打点ずつと、中軸で得点が生まれる理想な展開となった。

これでソフトバンクは8月22日のロッテ戦(ZOZO)から破竹の8連勝。この1週間はオリックス、日本ハムと2カード連続で3連勝し負け知らずのまま終えた。折り返し地点を過ぎ、勢いづき始めたソフトバンク。そのポイントになっているのが、キューバ人助っ人のグラシアルだろう。

グラシアルの復帰、復調と共に始まった連勝街道

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、デスパイネと共に再来日が遅れたグラシアル。8月18日のロッテ戦でようやく1軍に合流。復帰したばかり直後は無安打、1安打、1安打、無安打と波に乗れていなかったものの、連勝街道がスタートした22日の試合で4打数2安打とすると、グラシアルの復調と共にチーム状態も上向いていく。

翌23日の試合で初の3安打猛打賞、本拠地に戻ってきた25日のオリックス戦では初本塁打を含む2試合連続の3安打と、徐々に本来の姿に。これに呼応するようにチームも連勝を今季最長の8まで伸ばした。

グラシアルの復帰は、助っ人自身の打力以外でも、大きな効果をもたらしている。ロッテ戦までは6番で起用されていたが、デスパイネの再離脱後は3番ないし4番に入る。そして、その前には必ず中村晃、柳田の名前が。工藤公康監督ら首脳陣は「中村晃・柳田・グラシアル」の3人をセットで考え、その後ろに、さらにチャンスに強い栗原を置く。

シーズンの大部分で柳田を怪我で欠いた昨季、グラシアルはチームトップの出塁率、長打率を残した。得点圏打率も3割を超えており、チーム内では柳田と双璧を成す強打者である。そのグラシアルが打線に加わり、中村晃、柳田の後ろに据えることによって、中村晃、柳田との勝負を避けられないようになるのだ。

1週間で奪った32得点のうち半分以上の18点が4人から生まれたもの

「後ろにグラシアルがいることによって、柳田くんと勝負しないといけないことになる。グラシアルが好調であることもあると思いますが、勝負していけば、今日のような結果も生まれるのかなと感じてはいますね」

初回は中村晃が出塁して柳田が一発。3回も中村晃が死球で出塁し、柳田が二塁打でチャンスを広げ、グラシアルが適時打。4回は下位打線でチャンスを作り中村晃が2ラン。相手に、走者を溜めての大量失点を恐れさせて、勝負を誘う効果があると工藤監督は見る。

確かに、この1週間でグラシアルは5打点、柳田が6打点、中村晃が3打点、そして3人の後ろを打つ栗原が4打点としっかりと打点をあげている。32得点のうち18点がこの4人によって生まれており、理想的な並びになっていると言えそうだ。

今季ここまで“猫の目”のように変わってきたソフトバンクの打順だが、ここ5試合は2番中村晃から5番栗原までの並びは変わらない。これは今季初めてのことで、工藤監督も「最近は打撃コーチと話しても、打順の変動がなくなってきたなと感じる」と言う。それもグラシアルの復帰によるところが大きい。デスパイネとバレンティンを欠く中で、ファンから“神”と称されるグラシアルの存在が頼もしい。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

© 株式会社Creative2