川崎の台風浸水、被災住民ら市提訴へ 多摩川水門操作の責任追及

提訴の内容を被災住民らに説明する西村弁護士=川崎市中原区

 昨秋の台風19号による大雨で多摩川の水が排水管を逆流して市街地にあふれ出た川崎市の浸水被害を巡り、被災した住民らが30日、年内にも市を相手に、建物の修理費や慰謝料などの損害賠償を求めて提訴する方針を明らかにした。住民らは、逆流を防ぐための水門の閉鎖措置を行わなかった市の判断に対して、責任を追及する構えだ。

 同市中原区の中原市民館で開かれた被災住民向けの学習会で、代理人の西村隆雄弁護士が具体的な方針を示した。住民らは、浸水被害を受けた建物の修理費や家具・家電などの損害額、避難するために必要になった費用に加え、精神的苦痛を受けたとして1人当たり100万円の慰謝料などを市に請求する。

 浸水被害を巡っては、市が内水氾濫を防ごうと排水管の水門を閉めず、市内5カ所で逆流現象が発生。市の関係部局でつくる検証委員会は4月の最終報告で、逆流が確認された際は水門を全閉すると従来の操作手順を改定する方針を打ち出した。ただ今回は想定以上に多摩川の水位が上昇したとして、対応に瑕疵(かし)はなかったと結論付けた。

 西村弁護士は「台風19号の勢力が相当強いことは事前から呼び掛けられており、逆流の危険性があることは十分予測できた」と指摘。「全開の維持」の原則を見直した新しい水門の操作手順については、「ゲ-トを閉めなかった責任を、市が自ら認めているに等しい」と語気を強めた。

 学習会は市民団体「台風19号 多摩川水害を考える川崎の会」が主催し、被災住民ら約60人が参加。同会事務局で、自宅が浸水した男性(68)=同区=は「私たちが提訴せざるを得なくなるまで市は責任を認めず、怒り心頭。50~100人規模の集団を目標に、一つになって闘っていきたい」と力を込めた。

 今後は、台風襲来から1年を迎える10月12日に、被災住民らで集会を開くなどして原告を募り、年内の提訴を目指すという。

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