朗読劇「夏の雲は忘れない」 原爆資料館で1日限り“復活” 小学生7人、女優と共演

平和への思いを込めて朗読劇を披露する出演者=長崎原爆資料館

 被爆者の手記などを基に構成した原爆朗読劇「夏の雲は忘れない」が30日、長崎市平野町の長崎原爆資料館で上演された。長崎平和推進協会の被爆75周年記念事業の一環。昨年末に解散した朗読団体「夏の会」のメンバーだった渡辺美佐子さん(87)や高田敏江さん(85)、長内美那子さん(81)ら女優陣のほか、公募で選ばれた市内の小学生7人も出演した。
 長崎、広島の被爆者の手記などを基にした朗読劇を全国で披露してきた同会は、メンバーの高齢化などを理由に解散したが、市と同協会が長崎公演を依頼し、“1日限りの復活”が実現した。
 約1時間の朗読劇は、被爆医師だった故・永井隆博士が生き残った子どもたちの手記をまとめた「原子雲の下に生きて」や詩などで構成。被爆者が描いた絵や写真などがスクリーンに映し出され、被爆の惨状や家族を失った悲しみ、平和への思いなどを出演者らが表現した。自身の体験記が朗読された下平作江さん(85)は「素晴らしい朗読だった。被爆の実相を多くの人に伝えていただき感謝している」と目を潤ませた。
 出演した市立深堀小6年の楠山更紗さん(12)は「たくさんの拍手をもらい、原爆への思いが伝わったと感じた」、市立高城台小5年の松尾豪真君(10)は「みんなと遊べるのは平和だから。ずっと平和が続いてほしい」と話した。
 上演後、出演者は同館で田上富久市長と面会。渡辺さんは「節目の年に上演でき、感慨深い。記憶に残る日になった。子どもたちと舞台に上がれてうれしかった」と述べた。夏の会は市へ旧城山国民学校校舎(城山町)での展示に使用するケースを寄贈しており、田上市長から感謝状が贈られた。

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