開城に続き北朝鮮両江道の一部もコロナ対策で完全封鎖

北朝鮮は、北部両江道(リャンガンド)の商業都市・恵山(ヘサン)と、革命の聖地で大規模な再開発工事が行われている三池淵(サムジヨン)に対して、新型コロナウイルス対策として全面封鎖措置を取ったと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

情報筋によると、朝鮮労働党中央委員会政治局は8月27日午前8時、党両江道委員会と三池淵市、恵山市委員会に対して、両市を同日午後12時から完全封鎖するとの指示文を下した。ただ31日の時点で、朝鮮中央通信など北朝鮮国営メディアは、この件について報じていない。

指示文には、女性が川を渡って越境した事件の詳細が記され、超特級国家非常防疫体系を維持し、強力な封鎖を実施すると書かれているという。

これは、平安南道(ピョンアンナムド)の粛川(スクチョン)出身で、中国に売り飛ばされた人身売買の被害女性が8月24日、中朝国境を流れる鴨緑江を渡って北朝鮮に戻ろうとしたところを逮捕された事件によるものだ。

女性は三池淵市保衛部(秘密警察)の独房で隔離されたままで取り調べを受けているが、地元では、韓国に住んでいた元脱北者の再密入国事件で、全面閉鎖措置が取られた開城(ケソン)市同様に、両江道が閉鎖されるのではないかとの噂が流れていた。

また、三池淵市、恵山市の党委員会と地方政府機関に対して、住民の暮らしに関心を持って特別指導管理執行体系を立ち上げることと、封鎖が解除されるまで中央党と中央防疫指揮部に現地の実態報告を毎日行えとしている。

しかし、封鎖措置の対象は道全体ではなく、事件の起きた三池淵と道庁所在地の恵山に限定された。国際社会の制裁、長引く新型コロナウイルス、そして相次ぐ自然災害など二重三重の苦難に直面している状況で、全道を閉鎖するのは負担がかかるとの判断によるものと思われる。

現在、三池淵と恵山への人と物の移動が全面禁止されているが、現地からは悲鳴が上がっている。

「トゥルチュク(クロマメノキの実、ブルーベリーの一種)や松の実が旬を迎えたのに、人も物も行き来できないようにすれば、この季節に働いて稼がなければならない両江道の人々は、全員餓死しろということか」(現地の声)

一方、商業都市の恵山が閉鎖されたことで、物価が高騰するのではないかとの懸念の声が上がっている。冬の厳しい両江道では、食糧、油、薪など越冬用の物資の買い込みが始まるころだが、物流が止められたことで不足気味となり、値段が高騰する可能性があるというのだ。また、トンジュ(金主、新興富裕層)や商人が儲けを狙って値段を釣り上げる可能性がある。

閉鎖されていた開城市に対して、金正恩党委員長は支援物資を送ったが、両江道に対する支援物資に関しての動きは今のところ報じられていない。

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