2016年以降、スウェーデンでは18のミュージアムの入館料が無料となりました。多くの人に訪れてほしいとする政府の願いもありますが、実際にミュージアムはどんなサービスやコンテンツで来訪者を楽しませているのでしょうか。
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待ち合わせの前にちょっと立ち寄れる、入館無料のミュージアム
スウェーデンでは2016年2月1日より、18の国有ミュージアムの入館料を無料としました。これは文化遺産がみんなの所有物であるため、誰でもアクセスできるようにすべき(注1)という考え方にもとづいています。そのため、毎年スウェーデン政府では無料を継続するための予算確保をおこない、2020年現在も多くの人が文化遺産に触れる機会を提供し続けています。
* (注1)“Introduction of free admission to state museums” 2015年9月21日, Government Offices of Sweden ※リンク先は英語です
利用できるのは市民だけではなく、観光客も含まれます。対象ミュージアムのほとんどはストックホルム市内にあり、アクセスも簡単。私は友人との待ち合わせまでの空き時間に、美術館にふらりと立ち寄るといった利用の仕方をしていました。また友人から散歩に誘われ、複数のミュージアムをはしごしたこともあります。
なお、これらのミュージアムは入館無料ですが、テンポラリーの企画展やイベント、特別なプログラムなどは有料のものもあります。実際に訪れる際には事前に調べてみてくださいね。
それでは、ストックホルム市内にある入館無料のミュージアムの中から、好奇心をくすぐる仕掛けをいくつかピックアップします。
ミュージアムは頭ではなく、心で楽しむ
ストックホルム中心部からバスで30分ほど離れた場所にある民族学博物館は、スウェーデンの探検家たちが世界中から持ち帰った世界各地の民芸品コレクションです。彼らの冒険の軌跡を辿りながら進んでいくと、倉庫のような蔵のような展示にたどり着きます。
展示スペースの名前は「MAGASINET (雑誌)」、英語ではThe Storage(倉庫)です。どの戸棚を覗いても、その場を離れがたくなるような、魅力的なアイテムがずらり並んでいて、圧倒されます。もちろんすべてデータベース化されているので、気になるものがあればすぐに検索できます。
ふと見ると、アイテム検索の端末とは別に、小さなタブレットが置かれていました。映像がループで流れています。内容は、数多くのコレクションのどれになぜ惹かれたかをインタビューしたもの。回答しているのは、小学生から高校生くらいの子どもたちです。アイテムを選び、彼らの言葉でその理由を語っています。
それらの映像を見ていると、「好きと思う理由ってシンプルだな」ということに気づかされます。ミュージアムには教養や知識がたくさん詰まっていて、それを解き明かすのも醍醐味です。しかし、展示物を目の前にしたときに湧いてくる感情にもっと素直になって楽しむことも大事だと思いました。
こちらの展示スペースはオンラインからも体験できます。膨大なアイテムにぜひ触れてみてください。
民族学博物館(Museumof Ethnography, Sweden)
- 入館料: 無料
- コロナの影響で閉館していたが、6/3から再開済み。営業時間変更やオーディオガイドの貸し出しは中止などの対策は まで。
作品にインスパイアされたら、すぐアウトプット
次に紹介するのは、ストックホルム近代美術館が毎週日曜日に開催する「ファミリーサンデー」です。2歳から14歳以下の子ども向けに、展示作品の鑑賞とワークショップをセットにして提供しています。
当日先着順で、参加は無料。ひと家族から参加できる大人は一人という、子ども中心のプログラムです。もちろん作品に触れないようにするための細心の注意が必要ですが、2歳からミュージアムに通える環境は羨ましいですね。
ただし2020年8月末現在、新型コロナウイルス感染症の影響でこちらのプログラムを含めたツアーやイベントは中止となっています。そこでストックホルム近代美術館では、オンラインで楽しめる「おうちでアーティストみたいに創ろう!(Create like an artist – from home!)」という動画を公開しています。
Create like an artist – from home! – Moderna Museet i Stockholm
4歳から9歳が対象。実際のアーティストの作品を題材にして、その表現手法を専門家が解説、実際に家庭で揃えられる道具を使いアーティストになりきって自分の作品を制作できます。
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動画はいずれもスウェーデン語ですが、解説のパートや子どもたちが工夫しながら絵を描いている様子を見ることができます。
大人向けの展示作品を題材に、子ども向けワークショップをおこなうインスピレーション型ワークショップの事例は他にもあります。
王室のコレクションを展示する国立美術館でも、企画展が始まる際に、6歳から12歳を対象としたアフタースクールを開催。展示解説とワークショップを組み合わせておこなっています。こちらも同伴する大人の企画展チケット代は必要ですが、参加自体は無料です。
ストックホルム近代美術館(ModernaMuseet)
- 入館料: 無料(テンポラリーな企画展は19歳以上は有料)
- コロナの影響で閉館していたが、6/15から再開済み。営業時間変更やイベントプログラムの中止などの対策は まで。
- URL:https://www.modernamuseet.se/stockholm/en/
ストックホルム国立美術館(NationalMuseum)
- 入館料: 無料(テンポラリーな企画展は20歳以上は有料)
- コロナの影響で閉館していたが、6/16から再開済み。営業時間変更やイベントプログラムの中止などの対策は公式サイトまで
- URL:https://www.nationalmuseum.se/en/
一年でもっとも盛り上がる習慣 × ミュージアムで、さらに身近に
最後に紹介するのは、市民生活に密着したミュージアムのあり方です。スウェーデンではクリスマスシーズンのイベントごとや習慣をとても大切にします。そのひとつが、ジンジャーブレッド(Pepparkaka)です。
ストックホルム近代美術館のすぐ隣、建物自体がつながっている建築デザイン博物館、ArkDes(アークデス)では、毎年ジンジャーブレッドハウスのコンテストを開催しています。
プロからアマチュアまで、大人も子どもも、ジンジャーブレッドハウスが大好きです。コンテストのテーマも個性的。2018年はLUXURYだったのに対し、2019年はHOT!というように、毎回振り切っています。
ジンジャーブレッドハウスのコンテストは年一回ですが、家族みんなが必ず見に行きたくなるもの。すなわち、毎年一回、必ずArkDesを訪れるということです。共通の話題でもあるクリスマスシーズンのお約束が、ArkDesに市民を連れてくるきっかけとなり、ミュージアム自体が家族にとって身近な存在になっているように感じます。
日本国内のミュージアムでもさまざまな取り組みが増えています。在宅時間が多い期間ではありますが、近くのミュージアムを訪問したり、オンラインでコンテンツを体験するなどして、好奇心をくすぐってみてはいかがでしょうか。
建築デザイン博物館 ArkDes(Sweden'sNational Centre for Architecture and Design)
- 入館料: 無料
- コロナの影響で閉館していたが、6/3から再開済み。営業時間などは公式サイトで。
ArkDes - Sweden's National Centre for Architecture and Design
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