長崎くんち奉納踊り中止 伝統つなぐ 手ぬぐい作成 井村さん、思いを形に

「くんちへの思いを形にした」と語る井村さん=長崎市内

 新型コロナウイルスの影響で奉納踊りが来年に繰り延べとなった諏訪神社(長崎市上西山町)の秋の大祭「長崎くんち」への思いを形に残そうと、長崎市の立山1丁目自治会長の井村啓造さん(74)は今夏、手ぬぐいを作成した。
 井村さんが暮らす立山地区は、長崎くんちでみこしを担ぐ神輿守町(みこしもりちょう)。例年、長崎くんちの稽古始めとなる「小屋入り」の6月1日には、にぎやかなシャギリが同神社に近い自宅まで響くが、今年は何も聞こえず、途端に寂しさが込み上げてきたという。「この世界情勢だから中止は仕方がないと頭では分かっていたが、心に穴があいたような気持ちになった」と振り返る。
 そんな中、交流がある郷土史家の越中哲也さん(98)さんから6月下旬、「お願いしたかことがある。おくんちば何とかしてよ」と頼まれた。井村さんは「コロナだから何も残らなかった年にはしたくない」と思案。伝統を次世代につないでいくという思いを込め、氏子ら有志で同神社を参拝し、今年ならではの手ぬぐいを作成しようと構想した。
 手ぬぐいは墨染めの生地に白色で「長崎くんち」と自筆の書をあしらったデザイン。諏訪神社にまつられている諏訪、森崎、住吉の3社の紋も入れた。完成品を見た越中さんは「厳かな感じでとてもいい。長崎を大切にしたいという気持ちがうれしい」と語った。
 9月2日に手ぬぐいの清祓(きよはらい)を済ませ、長崎市桜町の「山崎印章」で1枚千円で販売を始めた。限定50枚。10月7日に有志で諏訪神社を参拝する。問い合わせは井村さん(電090.2508.7178)。

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