角煮まんじゅう「岩崎本舗」が続々新企画 「リスクを取ってでもチャレンジ」 不満なら返金、顧客に無料配布、YouTuber活用… ネット通販、8月売り上げ3倍に

角煮まんじゅうを全国に届けるため、さまざまな企画を打ち出す岩崎代表取締役=西彼長与町斉藤郷、岩崎食品

 角煮まんじゅうで知られる岩崎食品(長崎県西彼長与町、岩崎本舗)が、新型コロナウイルス禍を乗り切ろうと矢継ぎ早に新企画を打ち出している。試食提供でのPRを控える代わりに「満足できなければ返金」とうたったり、外出できない在京の顧客に「お見舞い」として無料で配ったり。著名ユーチューバーの発信力も活用し、8月のインターネット通販売り上げは前年同月比300%に達した。
 3月、全国の催事やイベントが軒並み中止となり、岩崎礼司(ひろし)代表取締役(35)は販売期限が迫る数万個の角煮まんを抱え、悩んでいた。賞味期限の40日前という自社ルールを曲げて販売期限を延ばすか、それとも廃棄するか-。
 “延命”はその場しのぎに過ぎず、廃棄処分も費用がかかり、何より「(食材の)豚に申し訳ない」。ひねり出した結論は「5個買えば5個贈呈」。実質半額の値引きで利益は無いが、会員制交流サイト(SNS)で情報が拡散、4月1日から2週間でさばけた。
 同月下旬には県の休業要請に応じてほとんどの店舗を閉め、工場も通算30日間止めた。その傍らネット通販に力を入れていく。
 これまで店頭の試食にPRの力点を置いていた。だが出店先施設から感染予防を理由に自粛を求められ、直営店で配ろうにも受け取ってもらえなくなった。そこで7~8月、味に納得しない購入者には返金するキャンペーンを実施。約2万個売れ、返金を求められたのはわずか3個だった。
 7月は観光客数の回復を当て込み生産量を昨年並みに戻していたが、感染の第2波が襲い、「Go To トラベル」は東京発着旅行が外れた。在庫を再び抱えるよりは、と顧客リストにある東京在住の2600人に無料で5個ずつ郵送。「外出ができない中でも少しでも長崎の味を楽しんで」と手紙を添えた。
 「利益は後回し。ファンをつくりたかった」と岩崎氏。お礼の手紙やメールが届き、泣きながら感謝を伝える電話もあった。「旅行や帰省を我慢する人が多い」と知った岩崎氏は8月16日まで全国送料を無料化。全国ニュースやサッカー情報サイトで取り上げられると、通販売り上げがぐんと伸びた。V・ファーレン長崎のアウェー会場で移動販売を重ね、一定知名度があったのが生きた。
 芸人の宮迫博之さんにもPRを依頼。ユーチューブのチャンネル「宮迫ですッ!」で長崎名物として紹介され、岩崎氏もリモート出演。8月20日の配信後、視聴数は20万回を超え、「宣伝費以上の収入につながった」と分析している。
 一方で、県外からの観光需要が見通せないため、新聞折り込みで地域住民に新商品を発信、来客時に密になりにくい郊外型の本社工場店に誘導する。岩崎氏は「何も手を打たず不安に耐えるより、ある程度リスクを取ってでもチャレンジし続ける方がいい」と話している。

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