車両価格299万円のトヨタ・ハリアーで「十分見栄が張れる」4つの理由

6月17日の発売開始後、月販目標台数3,100台に対し、約1ヶ月で約4万5,000台の受注が入り、納期もまだ見えていないほど大人気となっている新型トヨタ・ハリアー。今回は普通の自動車メディアでは触れない「本当に価値のある」グレードについて解説します。


そもそもエントリーグレードとは

クルマには当然のことながら「最廉価(エントリー)」から「最上位(最上級、ハイエンドと呼ぶ場合もあります)」まで多彩なグレードがラインナップされます。車種にもよりますが、日本人は相対的に「全部入り」というか、せっかくお金を出す以上「良い物が欲しい」という気持ちから初期の販売時には「最上位グレード」を選ぶケースが多いのです。

一方、最廉価グレードは最も安い価格を意味します。最廉価という言い回しは「一番下」のように捉えられがちなのでイメージを下げないためにも販売の現場などでも「エントリーグレード」と呼びます。

元々、最廉価グレードは「新型はこんなに安い」というイメージを訴求する「価格コンシャス」的な意味も含んでいます。コンパクトカーなどであれば、法人での複数台受注を意識したグレードとして一部では安全装備をカットするなどして車両本体価格を下げているケースもあります。

ただ、上記のことからも「装備が足りない」「価格だけ訴求されても困る」などの声も上がっており、昨今では単純に価格だけでは顧客は動かない証明ともなっているのが現実です。

高級SUVなのに車両本体価格は300万円以下

新型ハリアーには2Lのガソリン車と2.5Lのハイブリッド車が設定されており、駆動方式もFFとAWD(4輪駆動)を選ぶことができます。

その中でハリアーのエントリーグレードはガソリン車の「S」のFF車で、車両本体価格はハリアーの中で唯一300万円を切る「299万円」となっています。

パッと見れば高級感溢れるハリアーが299万円!と思う人も多いのではないでしょうか。これが価格コンシャスのマジックです。

では前述した廉価版という概念からはやはりハリアーの「S」も所詮は「価格だけの商品」なのでしょうか。

基本デザイン等は上位モデルと同等

新型ハリアーには現在のトヨタ車と同様の新しいクルマの考え方である「TNGA」が採用されています。骨格自体はそのクルマの走りを決める最も重要なファクターなので、これは最上位グレードであっても「S」でも変わりません。

写真は最上位のハイブリッドのZ"レザーパッケージ"価格は482万円です

つまりクルマの走りの基本を支える「体幹」の部分でSグレードは何も問題が無いどころか高い走行性能を持っているわけです。

そして人気のデザインに関しても同様です。ハリアーの最上位グレードは「Z“レザーパッケージ”」ですが、エクステリア上の大きな差は

①リアスポイラーがボディカラー同色ではなくブラックになる(サイド部の処理も異なります)。
②アウトサイドドアハンドルがメッキではなくボディ色になる。
③リアバンパーにメッキガーニッシュがない。

ほか数カ所あります。

そしてパッと見た時、一番目に付くのは
④アルミホイールが「S」の場合は17インチとなる点です。

アルミホイールに関して最上位グレードは19インチ、さらに高級感を演出する「高輝度シルバー塗装」が施されています。

ただ「S」にもしっかりアルミホイールは標準装備されていますし、実際の試乗でも乗り心地に優れ、問題はないどころか、タイヤとアルミホイールが軽量な分だけ、フットワークにも軽快さが加わり、これもひとつの乗り味として評価できます。

インテリアも十分な仕上げ

インテリアに目を移すと確かにハリアーの売りのひとつであるインパネ周りに施されたソフトパッド+ステッチやパネル類の加飾類は「S」には装備されません。

この手の上質感を演出する上手さがハリアーのポイントではありますが、実際にチェックすると細かい部分の仕上げの違いが重なって最終的には価格に反映されているのですが、エクステリアの部分でも述べたように基本造形自体は大きく変わることはありません。

またエアコンに関しても上位系は静電パネルにタッチするタイプなのに対し「S」はダイヤル式です。しかしダイヤル式はひとつ上の「G」でも同じですし、左右独立で温度調整ができるフルオートタイプである点は共通です。

この他にも話題となっているドラレコ機能付きの「デジタルインナーミラー」はメーカーオプションで8万8,000円で設定されていますが、この部分は好みになってくると思います。

インフォテインメントにも注目

新型ハリアーには世の中のトレンドに合わせ、カーナビを始めとしたインフォテインメントシステムに新しく12.3インチのワイドディスプレイ+SDナビゲーション+JBLプレミアムサウンドシステムが「Z」に標準装備、「G」にもメーカーオプションされます。

「Z」系には12.3インチの大型ディスプレイとSDカーナビを標準装備

ただ「G」のメーカーオプション価格を見ると36万9,600円と充実した機能を持つとは言え、結構な金額であることは間違いありません。

では「S」はどうでしょうか。例えば「S」はナビやオーディオは全てオプションというのであれば出費がかさみ、このグレード自体の価値は下がってしまいます。

しかし「S」には最近のトヨタ車で積極採用しているDA(ディスプレイオーディオ)が標準装備されています(「G」も同様)。

DAは手持ちのスマホを接続するだけで、スマホに搭載されたカーナビアプリや音楽を使うことができるデバイスです。特にトヨタのDAはAppleの「CarPlay」、Googleの「Android Auto」だけでなく、SDLと呼ばれる規格にも対応しており、LINEの「LINEカーナビ」ほかのアプリも使うことができます。

さらに画面自体も上位グレードほどではありませんが8インチと十分なサイズを確保、また音声認識のほか、DCMと呼ばれる通信モジュールも標準装備していますので、万が一の事故の際に救急対応してもらえるヘルプネットも初年度登録日から5年間無料で使うことができます。

先進運転支援システムも充実

昨今のクルマで重要なのがADAS(先進運転支援システム)です。トヨタではこれらを「トヨタ・セーフティ・センス」と名付けていますが、ハリアーの「S」に関しても基本機能はすべて標準装備します。

特に長距離ドライブで重宝する「レーダー・クルーズ・コントロール」や「レーントレーシングアシスト」などは標準装備。LEDヘッドライトの仕様は異なりますが、対向車や歩行者などを感知してヘッドライトの光軸を切り替える「オートマチックハイビーム」は標準装備されます。

ひとつ残念なのは後退時に物体を認識した際に自動でブレーキをかける「リアクロストラフィックオートブレーキ」と「ブラインドスポットモニター」が「Z」のみに標準装備されるのですが、これはメーカーオプション(6万8,200円)で選ぶことは可能です。

いたずらに装備を増やさない工夫を

冒頭で述べたように新型車が出ると最上位グレードが売れるケースが多く、ハリアーも例外ではありません。ハリアーを購入する場合、ベストバランスは中間グレードの「G」という声をよく聞きます。実際「S」では設定すら無い装備類もあり、「G」であれば限りなく「Z」に近づけることができるように前述したインフォテインメントシステムを含め、メーカーオプションも多彩です。

「S」のリア周り、基本の造形は変わりません,

ただガソリン車(FF)の場合、「S」と「G」の車両本体価格は42万円とそれなりに差があり、「G」の場合これにメーカーオプションをプラスしていくとさらに価格差が生まれ、それならば「Z」を買った方が良い、というケースも発生します。

つまりハリアーという極めて高いベース性能を持つSUVを手に入れるのにあえてエントリーグレードを選んでも恥ずかしいどころか、賢いクルマ選びができる歓びも手に入れることができます。

最後に今回も実際見積もりを取ってみました。

筆者的には前述した「リアクロストラフィックオートブレーキ+ブラインドスポットモニター」(6万8,200円)と「ETC2.0ユニット(2万9,700円)だけはぜひ付けてほしいので、これを加えた結果、現金一括払いで330万3,590円、60回分割払いの場合は月額6万800円(ボーナス時支払い無し、初回6万3976円)、残価設定型60回払いであれば月額3万9,500円(ボーナス時支払い無し、初回4万4,363円)で乗ることができます。

この他にも話題の「KINTO」など昔に比べクルマの購入&所有スタイルも進化しています。ディーラーで色々と比較してみるのも面白いでしょう。

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