「コロナよりも怖い」 台風10号 接近に備えて住民ら奔走

問診票を提出し避難所スペースに入る住民=6日午前9時28分、対馬市厳原町、市交流センター

 大型で非常に強い台風10号の接近を前に長崎県内では6日、住民らがぎりぎりまで備えに奔走した。避難所では検温、マスク着用、手のアルコール消毒のほか、自治体によっては問診票の提出など新型コロナウイルス感染症の対応が迫られる。身を寄せる人からは「今回の台風は新型コロナよりも怖い」と不安の声が漏れた。
 佐世保市の相浦港では男性漁師(55)が朝から「備えをする最後のタイミング」と船をロープなどで結び、慌ただしく作業を進めた。
 南島原市加津佐町で農業を営む門畑浩一さん(46)は、ビニールハウスの補強作業などに追われた。「今月末から稲の収穫が始まるので、強風で倒れないか不安。できる限りの備えはした。あとは祈るだけ」
 長崎市小浦町にあるホームセンター「ナフコ」に買い物に訪れた同市式見町、40代男性は「土曜日まで仕事で、やっと買い物に来たが、乾電池やベニヤ板など欲しいものが全て売り切れ。窓ガラスの補強には、まだ売っているもので代用するしかない」と困り顔。
 西海市大瀬戸町では、多くの商店などがシャッターを下ろす中、スーパー「松形屋」が営業を続けた。松本和宏社長(52)は「停電になれば冷蔵、冷凍品は破棄。(仕入れを減らして)商品棚を空にするわけにもいかない」と話した。
 長崎市千歳町の複合商業施設チトセピアには、立体駐車場に避難させようとする車が並び、6日午後1時前には約40台が連なる渋滞が発生した。同市大手2丁目の近藤廣久さん(73)は「朝から3時間以上並んでいるがまだ入れない」と苦笑いを浮かべた。
 避難所には台風9号の被害に遭った人の姿もある。新上五島町榎津郷の役場支所に避難した主婦、原テル子さん(66)は「(台風9号で)夫の釣り船が流され、破損した。これまで台風以外でも避難したことがなかったが、怖かったので来た」。台風9号で自宅の瓦がはがれる被害に遭った対馬市厳原町久田の中谷智恵美さん(62)は「雨風が強くなれば避難ができなくなるので早めに来たが、人が多くてびっくり。新型コロナも怖いが、今度の台風10号はそれよりも命の危険を感じる」とつぶやいた。

屋内駐車場がある商業施設には車が長い列をつくった=6日午後0時57分、長崎市千歳町(画像は一部加工)

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